将棋ソフト TACOS が橋本崇載五段に平手で善戦

将棋ソフトTACOS 対 橋本崇載五段でお伝えしたとおり、昨日、TACOS橋本崇載五段に公開対局を挑みました。棋譜はまだ公開されていないようですが、どこかで公開されたら追記します。

橋本五段が「棋士人生をかけて戦う」と臨んだ対局は、北陸先端大の橋本剛講師が操作する「タコス」の先手番で始まった。序盤は橋本五段が顔の見えない相手の様子をうかがう穏やかな差し手。先手有利な状態で中盤までは「互角か、むしろタコスが優勢」(飯田教授)で進んだ。

しかし、八十五手の橋本五段の「2三銀」の粘り腰をタコスがやや方向違いの手で受けたのが誘い水となり逆転模様に。橋本五段が底力を見せ、百二十六手でタコスが投了した。

コンピュータを相手にするときの定跡は、早いうちに形勢に差をつけておいて終盤の追い込みを受けても逃げ切れるようにすることですから、中盤まで差が付かない展開は危険でしたね。プロ棋士が初めてコンピュータに負けるということがあると、かなり話題を呼ぶことが予想されます。中途半端な形で決着がついてしまう前に、どのような形式で対局したら正式に「コンピュータが人間に勝った」と認めることにするのかを議論しておくべきでしょう。

対局した橋本崇載五段は「一時は『人間敗北』という見出しが頭をよぎった。棋士人生十五年でこんなに頭が真っ白になったのは初めて」と、激戦を振り返った。

自らもプロ六段の腕前を持つ飯田教授は「思った以上の接戦」と驚きながらも、「方向違いの手が終盤で三回出て逆転されてしまった。こうした部分でまだ差があり、どう縮めていくかが今後の課題」と話した。

橋本五段が負けなくて良かったと思います。コンピュータが人間に勝つ日が何年後にやってくるかはわかりませんが、今はまだその日でないことは確かです。

そういえば、紹介していませんでしたが、橋本崇載五段は9月13日に竜王戦3組昇級者決定戦決勝で勝って、2組への昇級を決めました。渡辺明竜王を除いて、竜王戦ランキング2組以上では橋本五段が最年少。順位戦C級2組で竜王戦ランキング2組以上なのも橋本五段だけです。順位戦竜王戦以外の棋戦では奮いませんでしたが、今後の活躍が期待されます。

9月21日追記

北陸先端科学技術大学院大学内にあるゲーム情報学研究センターTopics(英語ページ)2005年9月18日付からリンクされているPDF形式の文書の中にこの将棋の棋譜が公開されています。

PDF文書をご覧になれない方のために、下に棋譜をテキスト形式で記しておきます。上の文書には棋譜の他に簡潔な解説や飯田弘之六段(北陸先端科学技術大学院大学教授)のコメントも日本語で記載されていますので、PDFを読める方はご覧になってみて下さい。

先手:TACOS
後手:橋本崇載 五段
▲7六歩   △1四歩 ▲2六歩   △3四歩   ▲2五歩   △8八角不成
▲同 銀   △2二銀 ▲7七銀   △3三銀   ▲1六歩   △7二銀
▲3八銀   △6四歩 ▲7八金   △6三銀   ▲6八玉   △3二金
▲5八金   △9四歩 ▲7九玉   △4四歩   ▲4六歩   △5四銀
▲8八玉   △4二玉 ▲4七銀   △6二飛   ▲3六歩   △6五歩
▲5六銀   △3一玉 ▲3七桂   △6四角   ▲4七金   △5二金
▲6六歩   △同 歩 ▲6八飛   △7四歩   ▲6六銀   △7三角
▲7七銀   △6五歩 ▲6三歩   △同 金   ▲6五銀   △同 銀
▲同 飛   △6四歩 ▲6八飛   △9三桂   ▲4五歩   △同 歩
▲同 桂   △4四銀 ▲4六歩   △8五桂   ▲8六銀   △8四歩
▲2四歩   △同 歩 ▲5一角   △9二飛   ▲7三角成 △同 金
▲5一角   △6三金 ▲8四角成 △4五銀   ▲8五銀   △3三角
▲6六歩   △5四銀 ▲4五桂   △4四角   ▲7四銀   △8六歩
▲同 歩   △2三銀 ▲6三銀成 △同 銀   ▲7三馬   △5四銀
▲8三銀   △9三飛 ▲8四金   △6五歩   ▲9三金   △6六歩
▲5一飛   △2二玉 ▲5三飛成 △6七歩成 ▲4四龍   △6八と
▲同 金   △6七歩 ▲5八金   △4三銀打 ▲5四龍   △同 銀
▲9一馬   △1二玉 ▲2二歩   △同 金   ▲1三香   △同 玉
▲1五歩   △同 歩 ▲同 香   △1四歩   ▲3一銀   △3二金
▲7七角   △9五桂 ▲9四銀成 △8七歩   ▲7九玉   △1八飛
▲4八金引 △同飛成 ▲同 金   △6六香   ▲1四香   △同 銀
まで126手で後手の勝ち

それからTACOSのページも本日移転が行われました。