ライントピックス訴訟の判決文を読んでの感想(暫定)

見出しの著作物性に関して判決文が公開されたのでまとめと感想を書いてみます。まだ他のサイトの解説などは一切参照していませんので、ここで書いた内容は個人的かつ暫定的なものです。著作権法などに詳しい方の解説などを読んでから、改めて書き直すつもりでいます。

比較および参照のため、一審の判決にもリンクしておきます。

主文

まずは主文から。

  • 1 原判決を次のとおり変更する。
    • (1) 被控訴人は,控訴人に対し,23万7741円及びこれに対する平成16年10月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
    • (2) 控訴人のその余の請求をいずれも棄却する。
  • 2 控訴人が当審で拡張した請求をいずれも棄却する。
  • 3 訴訟費用は,第一,二審を通じ,訴えの提起及び控訴の提起の申立て手数料のうち1万分の5を被控訴人の負担とし,その余の訴訟費用はすべて控訴人の負担とする。
  • 4 この判決は,上記1(1)の部分に限り,仮に執行することができる。

地裁では「原告の請求をいずれも棄却する。」だったのが、一部変更されてデジタルアライアンスに237,741円(+利子)の損害賠償が課せられたわけです。ただし、訴訟費用の負担割合はデジタルアライアンスが0.05%と極めて小さい割合となっています。

上記1(2)にある「その余の請求」がどのようなものであったかを見るために、読売新聞の請求事項を見てみます。

  • 1 原判決を取り消す。
  • 2 被控訴人は,被控訴人の運営する別紙1「被控訴人ホームページ目録」記載のホームページ(以下「被控訴人ホームページ」という。)上において,別紙2の「著作物目録1」記載の記事見出し(以下「YOL見出し」という。)及び別紙2の「著作物目録2」記載の記事本文(以下「YOL記事」という。)を使用してはならない。
  • 3 被控訴人は,YOL見出しのデータを頒布してはならない。
  • 4 被控訴人は,その所有するパソコンのハードディスク内にYOL見出し及びYOL記事のキャッシュデータを保存してはならない。
  • 5 被控訴人は,控訴人に対し,2480万円及びこれに対する平成16年10月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
  • 6 訴訟費用は,第一,二審を通じ,被控訴人の負担とする。
  • 7 第5項及び第6項につき仮執行宣言。

このうち、5については約100分の1、6については10000分の5が認められました。7も一部認められましたが、金額を考えるとこれは実質的には意味がなさそう。2・3・4については認められませんでした。なお、4が「控訴人が当審で拡張した請求」にあたります(2の一部も)。ここで請求のあった2480万円の内訳は、見出し利用に関わる「使用許諾料相当額」として480万円のほかに、「無形損害」と「弁護士費用」がそれぞれ1000万円ずつということです。

争点

一審での訴訟の争点は以下のようなものでした。

  1. (主位的主張)被告サイト上に被告リンク見出しを掲出させる等の被告の行為は,原告がYOL見出しについて有する著作権(複製権及び公衆送信権)を侵害するか。
  2. (予備的主張)被告サイト上に被告リンク見出しを掲出させる等の被告の行為は,原告に対する不法行為を構成するか。
  3. 損害額はいくらか。

高裁でもこの基本線は変わりませんが、これにデジタルアライアンスの行為が不正競争行為にあたるかという争点が追加されました。そして、判決では著作権侵害および不正競争行為はいずれも否定されたものの、不法行為については肯定され、その損害額が237,741円と認定されました。

これらの争点について順に見ていきます。

著作権侵害について

読売新聞は、二審での主張で「 YOL見出しはそのすべてに著作物性が認められるべきであるが,その中でも特に創作性の高さが顕著な見出しを以下に列挙し,それぞれについて検討を加える。」と述べ、いくつかの見出しを掲げてその著作物性について検討しています。

例えば、「マナー知らず大学教授,マナー本海賊版作り販売」という見出しに著作物性があるかどうか。読売新聞は「このような表現方法をとることは,決して,表現テーマとの関係において通常よく用いられる方法とはいえないのであるから,この点に編集記者の個性が遺憾なく発揮されていると評価できる。」と主張します。しかし、地裁判決では「このような対句的表現は,一般にしばしば使われる方法であって,格別な工夫であると評価することはできない。上記YOL見出しは,全体として,ありふれた表現であるから,創作性を認めることはできない。」と著作物性が否定され、高裁も同様の判断を示しました。二審で読売新聞は365個の見出しを掲げてそれぞれについて著作物性を主張しましたが、高裁判決はそのすべてについて「個別具体的に検討」した結果、「その表現が著作物として保護されるための創作性を有するとは認められない。」と著作物性を否定しています。

ただし、これは個別の見出しに関して精査した結果であり、著作物性を具えた見出しが存在する可能性まで否定しているわけではありません。

一般に,ニュース報道における記事見出しは,報道対象となる出来事等の内容を簡潔な表現で正確に読者に伝えるという性質から導かれる制約があるほか,使用し得る字数にもおのずと限界があることなどにも起因して,表現の選択の幅は広いとはいい難く,創作性を発揮する余地が比較的少ないことは否定し難いところであり,著作物性が肯定されることは必ずしも容易ではないものと考えられる。

しかし,ニュース報道における記事見出しであるからといって,直ちにすべてが著作権法10条2項に該当して著作物性が否定されるものと即断すべきものではなく,その表現いかんでは,創作性を肯定し得る余地もないではないのであって,結局は,各記事見出しの表現を個別具体的に検討して,創作的表現であるといえるか否かを判断すべきものである。

上記のうち、第1文については地裁判決の次の部分が対応しているように思われます。

(1)YOL見出しは,その性質上,簡潔な表現により,報道の対象となるニュース記事の内容を読者に伝えるために表記されるものであり,表現の選択の幅は広いとはいえないこと,(2)YOL見出しは25字という字数の制限の中で作成され,多くは20字未満の字数で構成されており,この点からも選択の幅は広いとはいえないこと,(3)YOL見出しは,YOL記事中の言葉をそのまま用いたり,これを短縮した表現やごく短い修飾語を付加したものにすぎないことが認められ,これらの事実に照らすならば,YOL見出しは,YOL記事で記載された事実を抜きだして記述したものと解すべきであり,著作権法10条2項所定の「事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道」(著作権法10条2項)に該当するものと認められる。

この文が、見出し一般に付いてまで著作物性を否定していると読めるのかどうかはよくわかりません。

著作権侵害に関する判示を読んでの感想

著作物性が否定されたのは通説通りで、これが肯定されてしまったら大変なことです。しかし、見出しというものはそのあり方が法律で規定されているわけでも何でもない以上、すべての見出しが有する性質を挙げることはできませんから、どんな見出しでも著作物性が否定されるとすることは原理的に不可能であり、その意味で高裁判決のいうように個別具体的に検討して判断すべきであるというのはもっともだろうと思います。個人的には、地裁判決もその点では同様の判断を示しているように受け取れると思います。

しかし、著作物性のある見出しが存在しうるとしても、読売新聞が著作物性が肯定されると主張した365個の見出しはどれも著作物でなかったわけですから、通常見られる見出しのうち著作物性を具えるものは万に一つもないと言って良いでしょう。見出しが俳句になっているとか、明らかに普通の見出しと違うものでない限り、著作物性があるかどうか気にする必要はないと考えられます。

不正競争行為について

これについては、次のように述べて不正競争防止法違反の主張を否定しています。

そうすると,仮に,YOL見出しを模倣したとしても,不正競争防止法2条1項3号における「商品の形態」を模倣したことには該当しないものというべきであって,その余の点について判断するまでもなく,控訴人の不正競争防止法違反を理由とする本訴請求は,理由がない。

不法行為について

まず不法行為一般を考えるときの前提として。

不法行為民法709条)が成立するためには,必ずしも著作権など法律に定められた厳密な意味での権利が侵害された場合に限らず,法的保護に値する利益が違法に侵害がされた場合であれば不法行為が成立するものと解すべきである。

そして、見出しが「法的保護に値する利益」となりうると述べています。

ンターネットにおいては,大量の情報が高速度で伝達され,これにアクセスする者に対して多大の恩恵を与えていることは周知の事実である。しかし,価値のある情報は,何らの労力を要することなく当然のようにインターネット上に存在するものでないことはいうまでもないところであって,情報を収集・処理し,これをインターネット上に開示する者がいるからこそ,インターネット上に大量の情報が存在し得るのである。そして,ニュース報道における情報は,控訴人ら報道機関による多大の労力,費用をかけた取材,原稿作成,編集,見出し作成などの一連の日々の活動があるからこそ,インターネット上の有用な情報となり得るものである。

そこで,検討するに,前認定の事実,とりわけ,本件YOL見出しは,控訴人の多大の労力,費用をかけた報道機関としての一連の活動が結実したものといえること,著作権法による保護の下にあるとまでは認められないものの,相応の苦労・工夫により作成されたものであって,簡潔な表現により,それ自体から報道される事件等のニュースの概要について一応の理解ができるようになっていること,YOL見出しのみでも有料での取引対象とされるなど独立した価値を有するものとして扱われている実情があることなどに照らせば,YOL見出しは,法的保護に値する利益となり得るものというべきである。

地裁はこの点について次のように判示していました。

YOL見出しは,原告自身がインターネット上で無償で公開した情報であり,前記のとおり,著作権法等によって,原告に排他的な権利が認められない以上,第三者がこれらを利用することは,本来自由であるといえる。不正に自らの利益を図る目的により利用した場合あるいは原告に損害を加える目的により利用した場合など特段の事情のない限り,インターネット上に公開された情報を利用することが違法となることはない。

これらの違いがどこにあるのか見てみると、高裁では「YOL見出しのみでも有料での取引対象とされるなど独立した価値を有するものとして扱われている実情がある」というのに対し、地裁では「YOL見出しは,原告自身がインターネット上で無償で公開した情報であり」という部分がポイントなのかなと感じました。高裁判決のいう「有料」とは次のような意味です。

ミウリ・オンラインに掲載されたYOL見出し及びYOL記事は,一般読者がインターネット上でアクセスし,無料で閲覧することができることになっており,控訴人がYOL記事等を提供しているヤフー,インフォシークなどのポータルサイト上のニュース欄でも,インターネット上でアクセスし,無料で閲覧することができることになっている。しかし,これらは,ニュース記事等が掲載されたページに広告を併せて掲載することによる広告収入で利益が確保されており,その結果,読者に対しては無料提供している形になっているにすぎず,ニュース記事等を全く無料で開放しているわけではない。そして,控訴人から上記ヤフーなどへのYOL記事等の提供は,有料で行われているほか,YOL見出しは,YOL記事と離れて独自に取引されるようになっている。

デジタルアライアンスは、読売新聞のこのような意味での利益を侵害したというわけです。具体的には次のように書かれています。

被控訴人は,控訴人に無断で,営利の目的をもって,かつ,反復継続して,しかも,YOL見出しが作成されて間もないいわば情報の鮮度が高い時期に,YOL見出し及びYOL記事に依拠して,特段の労力を要することもなくこれらをデッドコピーないし実質的にデッドコピーしてLTリンク見出しを作成し,これらを自らのホームページ上のLT表示部分のみならず,2万サイト程度にも及ぶ設置登録ユーザのホームページ上のLT表示部分に表示させるなど,実質的にLTリンク見出しを配信しているものであって,このようなライントピックスサービスが控訴人のYOL見出しに関する業務と競合する面があることも否定できないものである。

そうすると,被控訴人のライントピックスサービスとしての一連の行為は,社会的に許容される限度を越えたものであって,控訴人の法的保護に値する利益を違法に侵害したものとして不法行為を構成するものというべきである。

つまり、ライントピックスは読売新聞のサービスと競合するから利益を侵害したことになるわけです。具体的には、(無断でなければ大丈夫なのは当然として)

  1. 営利の目的で
  2. 反復継続して
  3. 作成されて間もない時期に
  4. 多数のサイトに配信する

このような条件があったために不法行為とみなされたと言えるでしょう。

不法行為に関する判示を読んでの感想

当初このニュースを聞いたときに持った印象と比較して冷静な判断だという感じがしました。不法行為であるとはいっても、競合しなければ当然ながら利益を侵害しないわけです。たとえ、見出しをそのままコピーする行為であっても、手動で行われる程度であれば上の2.の条件はみたされないでしょうし、見出しを自動的に取得して表示するようなアプリケーションがあったとしても、営利目的でなかったり多数のサイトに配信するようなものでなければ大丈夫と思われます。

また、ここでいう営利目的とは見出しを直接に利用してお金を稼ぐ行為をいうのであって、見出しのコピーが掲載されているページを管理している者が営利企業であるとか、見出しのコピーと一体となっていない別の部分に営利目的の広告が掲載されているとかいった形態では、競合しているとは言えないでしょう。

そうしてみると、ここで認定されたような不法行為の基準は極めて狭い範囲にしか適用されず、見出しを利用する行為の大部分は不法行為にあたらないと考えられます。

損害額について

読売新聞の請求した2480万円の内訳は、見出し利用に関わる「使用許諾料相当額」として480万円のほかに、「無形損害」と「弁護士費用」がそれぞれ1000万円ずつでした。

まず、480万円というのは、読売新聞の契約したうちの1つについて月額10万円というものがあり、その24ヶ月分の2倍ということです。この「2倍」については、理由がないということで高裁判決では真っ先に否定されています。

次に月額10万円の契約と比較して利用した見出し数が少ないことから、月額10,769円と見積もっています。ライントピックスの存在によってYOLへのアクセス数が減少したといった現象は証拠上認められないのでその意味では損害がないと言えなくもありませんが、実際に契約を結んでいる者がいる以上はこの金額を損害額とすることが相当ということです。

以上のように,控訴人には被控訴人の侵害行為によって損害が生じたことが認められるものの,使用料について適正な市場相場が十分に形成されていない状況の現状では,損害の正確な額を立証することは極めて困難であるといわざるを得ない。そうであってみると,民訴法248条の趣旨に徴し,一応求められた上記損害額を参考に,前記認定の事実及び弁論の全趣旨を勘案し,被控訴人の侵害行為によって控訴人に生じた損害額を求めると,損害額は1か月につき1万円であると認めるのが相当である。

次に「無形損害」ですが、これは理由がないと退けられています。そして「弁護士費用」については、次のように請求を退けています。

弁護士費用については,上記(a)の認定額が控訴人の当初の請求額や減縮後の請求額(いずれも差止請求部分を含む。)に照らし,著しく僅少である上,被控訴人も控訴人の請求額に対応しないまでもある程度の弁護士費用の負担を余儀なくされていることが容易に想像され,しかも,控訴人が当裁判所が判断したような相当額の支払いを求めて適切な事前交渉をしているとは認められない本訴においては,被控訴人に控訴人が要した弁護士費用を負担させるのは相当ではない。

損害額に関する判示を読んでの感想

ニュースを読んだ当初は、請求額と比べてずいぶん少額だと思ったのですが、「無形損害」と「弁護士費用」はもともと認められる可能性の低かったように思われるので、この程度は読売新聞にとっても織り込み済みなのかもしれません。額が利用した見出しの個数に比例すると判示されたのは想定外だったのかもしれませんが、1日あたり1つの見出し利用がおよそ1,500円というのはいい金額ではないでしょうか。

差止について

本件をめぐる事情に照らせば,被控訴人の将来にわたる行為を差し止めなければ,損害賠償では回復し得ないような深刻な事態を招来するものとは認められず」ということで、認められませんでした。

著作権侵害もしくは不正競争防止法違反が認められていれば、差止請求も認められた可能性が高かったと思います。

訴訟費用の負担について

訴訟費用の負担については,本訴の訴額が差止請求部分と損害賠償請求部分を合算すると,4億円を超えるものであるのに,認容額は損害賠償のごく一部にすぎず,しかも,本訴における主張立証の大半は,著作権に基づく請求について行われ,この点について控訴人は敗訴しているほか,被控訴人は遠隔地からの応訴であること,控訴人が適切な事前交渉の措置を講じなかったこと,和解勧試における状況によれば,被控訴人は相当額の金銭の支払いを検討する用意があるとの意向を示唆していたことなどを考慮すると,訴訟費用の負担のうち,訴えの提起及び控訴の提起の申立て手数料の1万分の5を被控訴人の負担とし,その余の訴訟費用をすべて控訴人の負担とするのが相当である。

  • 巨額の請求に比して、認められた損害賠償額が小さかった。
  • 主要な争点であった著作権侵害においては、読売新聞が敗訴した。
  • デジタルアライアンスの所在地が神戸市なのに、東京での訴訟だった。
  • 読売新聞が適切な事前交渉をしなかった。
  • デジタルアライアンスは和解によって相当額を支払うことを示唆していた。

このような事情から、デジタルアライアンスの訴訟費用の負担はごくわずかですんだということです。