プロ編入試験の「効果」

神戸新聞の記事

瀬川晶司四段のプロ編入試験が将棋界にとってプラスだったという記事。

日本将棋連盟発行の月刊誌「将棋世界」の部数は一九八五年ごろのピーク時から約三分の二に落ち込んでいたが、編入試験開始とともに減少傾向が止まった。同連盟出版部は「正確な数字が出るのは年明けだが、関連記事の掲載が始まった八月号から書店への出荷数が上向いているようだ」と、“瀬川効果”を認める。

将棋世界の部数は、将棋人気を示す一つの指標になると考えられます。それが上向いているのであれば、効果があったということになりますね。しかし、数字をつかむのにそんなに時間がかかっていては、対策を取ろうにも後手を踏んでばかりになると思うのですが。

他のアマ強豪も色めき立つ。尼崎市在住で全国屈指のアマ強豪、今泉健司さん(32)は「僕にとっても、あきらめていた夢がかなうチャンスが来た」と声を弾ませる。瀬川さん同様、年齢制限で奨励会を退会したが、プロとの対戦成績は四勝三敗と勝ち越している。

しかし、同連盟は今回の編入をあくまで特例と位置づける。今後の希望者には「プロ入り編入試験検討委員会」が考案中の新制度で応える方針だ。同委員会の案が来年五月の棋士総会で承認を得れば、正式な編入制度がスタートする。ただ、委員の一人、森下卓九段は「受験のチャンスは広げる方針だが、合格基準は厳しくなるかもしれない」と話す。

ただ、これだけ盛り上げたことによる反動も心配です。こういう流れで来て、現行制度から小幅な改革にとどまった場合には落胆が広がることになるでしょう。はじめにはっきりした理念を打ち出し、それに沿った制度を設けるようにする必要があると思います。その点でもプロ編入試験制度のアンケートに期待がかかります。ファンの生の声がたくさん届くといいですね。この件については個人的なまとめを数日後に書きたいと思っています。

ところで、渡辺明ブログ:アンケートにご協力下さい。渡辺明竜王によるコメントによれば、「メールアドレスを入力しなくても送信できるそうです」とのことです。送信内容の控えをメールで受信する必要のない場合には、メールアドレスは不要のようですね。(セキュリティの観点からは、メールアドレス欄に他人のものが故意に入力されたらどうなるのか気になりますが、まあ大丈夫なのでしょう。)

日経産業新聞の記事

11月14日付の日経産業新聞にも「あきらめないでよかった プロ棋士に“転職”の瀬川晶司さん」という見出しの記事が掲載されています。この新聞の性格上、ワイイーシーソリューションズに勤務するサラリーマンとしての瀬川四段に焦点が当たっています。

――編入試験が始まってから会社勤めはどうしていたのですか。

「試験は七月に始まりましたが、会社に迷惑をかけるわけにいかないので、可能な限りいつもと同じように勤務しました。ただ対局直前は欠勤せざるをえず、同僚が仕事を肩代わりしてくれたこともありました。うれしかったのは、私の仕事の負担を仲間がさりげなく減らし、環境を整えてくれたこと。『頑張れよ』とか『良かったな』と言ってくれたのが励みになりました」

職場の仲間の支えがあっての成功物語。いい話です。また、会社での業務は次のようなものだそうです。

最初に配属されたのは社内システムを運用・管理する部署。社員に情報システムの使い方を説明したり、プログラムを手直ししたりしていました。現在は取引先からの問い合わせに答える業務をしており、四人の担当者をまとめる立場にいます。

瀬川四段の記者会見での話を聞いていて滑舌がいいなあと思っていたのですが、仕事で話す機会が多くて慣れている面があったのですね。プログラミングができる棋士も少ないはずなので、役に立つことがあるのではないでしょうか。

現在はまだ会社員の身分でもある瀬川四段ですが、今後はプロ棋士に絞るということです。

――会社勤めの人は誰でも一度は転職を考えます。サラリーマンの立場を捨てることに不安はありませんでしたか。

「これからはプロ一本でやっていきます。今の年収は四百万円程度。今度所属するフリークラスだと勝たなければ百万−二百万になってしまいます。だけど好きなことやるのにお金は関係ありません。社長が何らかの形で支援をしたいといってくれて大変感謝していますが、安定収入を望んでいるわけではありません」

仕事の引き継ぎもあるでしょうから今すぐに将棋に専念というわけにはいかないのかもしれませんが、ワイイーシーソリューションズのバックアップがあるというのは瀬川四段にとって心強いですね。後に続く人のためにも、さらに実力を示してほしいと思います。

*1:「将棋会」は「将棋界」の誤字でしょう。