「大和証券杯ネット将棋棋戦」創設

各種リンクは昨日の来年3月に「渡辺明竜王vsBonanza」の公開対局からどうぞ。

ネット上の新棋戦創設

2007年4月から新しく「大和証券杯ネット将棋棋戦・最強戦」が行われることになりました。トップ棋士16名によるトーナメント戦、毎週日曜日午後8時開始で開催されます。最大の特徴はインターネット上で指されるの公式戦であること。囲碁では大和証券杯ネット囲碁オープンが開催されていますが、こちらは非公式戦です。

16名はタイトルホルダー、棋戦優勝者、賞金ランキング上位者の順に選出されます。実質的には名人+A級10名+新人王戦優勝者の12名に、竜王戦などで活躍した棋士が加わる陣容になるでしょう。今年の新人王戦優勝の糸谷哲郎四段がトップ棋士相手にどこまで活躍できるかに個人的に注目しています。(参加棋士で確定が森内俊之名人、羽生善治三冠、佐藤康光棋聖の3名だけになっているのですが、NHK杯優勝の丸山忠久九段と新人王戦優勝の糸谷四段も確定のはずです。)

対局は「対局専用サーバー」で行われるということです。一瞬、将棋倶楽部24でやるのかと思ったのですが、持ち時間も30分+秒読み30秒ということで違うようですね(24の長考設定は「30分+秒読み60秒」)。不測の事態によりサーバが突然利用できなくなる可能性も考えられますので、対局者に責任のない原因で対局が中断したときの扱いをあらかじめ決めておくべきだと思います。

対局者は原則として自宅から接続して対局するということです。棋士はすべからくパソコンを使いこなせてインターネットへの接続環境も整えるべきことという前提があるわけですね。現在は必ずしもそうではないと思いますが、そうなるようにお願いします。ただ、きちんとした環境でも、接続していて対局中に突然途切れてしまう経験をしたことのある方は多いと思います。そんな原因で熱戦が中途半端になってしまったら興ざめですので、将棋会館関西将棋会館にきちんとした環境を準備してそこで対局してもらう方が良いのではないかと感じます。プロバイダなどにスポンサーになってもらって整備するようなことができるといいですね。

さらに、渡辺明竜王が書くように「『不正をやろうと思えばできる』環境で指すことが嫌」という問題もあります。米長邦雄永世棋聖は「トップ棋士は他人から助言を受けるようなまねはしない」と話したそうですが、それを立証できない環境が問題だということですね。自分のパソコンを使うということはそれだけ細工をする余地もあるので、今後将棋ソフトが強くなっていくと性善説だけではやっていけなくなるのではないかと懸念しています。

対局中継は来年春に新設される公式サイトで行われます。秒読みが30秒というのがやや不安を感じるところ。秒読みが短くなると観戦者が再読込する頻度が増えますので、その分だけサーバへの負担が増加します。終盤でつながらなくなって、やっとつながったら何手も進んでいたということのないようにしてほしいものです。

この「最強戦」は新棋戦の第1弾で、このあと女流棋士やアマチュアの棋戦も予定されているそうです。たしか、年4回のペースで行うということだったと思うので、「最強戦」が15週で終わるのにつなげる形になるのでしょうね。何ヶ月かしたらまた発表があるのだろうと思います。

一つ気になっているのですが、大和証券名人戦協賛を継続するのでしょうか。名人戦問題とも絡んで不確定なのかもしれませんが、今回の発表では触れられていませんでした。

渡辺明竜王vsBonanza」 平手での公開対局

この新棋戦創設を記念して「渡辺明竜王Bonanza」の平手での公開対局が2007年3月21日に品川プリンスホテルで行われます。日経の記事によると、「対局の模様は連盟が来春立ち上げる動画配信サービスでも中継する予定だ」とのことです。動画中継の新サービスまで作るんですね。動画中継は、テキスト形式の中継やすでに録画してある動画の配信に比べて、配信側に要求されるスペックが大幅に上がるので無料で運営するのは厳しいのではないかと思います。それこそ、24BBネットの再来という感じになるのでしょうか。

昨年秋にコンピュータ対プロ棋士の対局が「禁止」とされてから、男性棋士がソフトと対局する初めての催しとなります。コンピュータはまだトッププロを負かすほど強いわけではなく、この勝負は人間がまだ負ける段階ではありません。持ち時間が2時間ということもあり、渡辺竜王が負ける可能性はせいぜい二歩を打つくらいではないかと私は思っていますが、それでも0%ではないということでプレッシャーは大きいでしょうね。万が一負けたらいろいろなものがおじゃんになってしまいますので。内容はどうでもいいので、何があっても絶対に勝ってほしいと思います。

わからないのは、どうして渡辺竜王だったのかということ。まあちゃんと勝てば誰でもいいのですが、最終的に決着を付けるときはどの人間を選ぶのか説明できるようにしておくことが求められます。

対局料などは公表されていない。米長会長は昨年10月の定例会見で「プロ棋士とソフトの対局は1億円なら認める」と話していたが、関係者によると、今回渡辺竜王が指すことによってスポンサーから将棋連盟に入る金額は3000万円程度と推定されている。

ここでの「将棋連盟に入る金額」というのは対局料が含まれるのかどうかわかりませんが、米長永世棋聖が1億円とはいかなかったと書いていた記憶があるので、結局そんなものだったということなのだろうと推測しました。それでも十分大きな額だと思いますが。