取る一手将棋を考える (2)
(取る一手将棋を考える (1) からの続き。)
先手が左端定跡で9筋からの攻めを目指すとき、次のような進行になることがあります。
▲9六歩 △何か ▲4八銀 △何か ▲9五歩 △何か
後手はこの3手でどの駒を動かすかが問題となります。
対策の一つに、飛車先をのばし先手が態勢を整える前に飛車をさばいてしまうという作戦があります。例えば、次のような手順です。
▲9六歩 △8四歩 ▲4八銀 △8五歩 ▲9五歩 △8六歩 ▲同 歩 △同 飛
こうなれば次に▲9四歩 △同歩 ▲同香 △同香 ▲9九角 △同香成 ▲8八銀と左端定跡に来られても、△同飛成から龍を使うことができるので、どこかで先手玉に王手がかかり取る一手の連続から逃げ出すことができます。後手に手番が回れば、豊富な持駒で一気に先手玉を詰ますことができるでしょう。このように、始まって数手で局面の微妙な差異によって勝ち負けが左右されるのが、取る一手将棋の面白いところです。
この変化で先手が一気に勝ちを決められる可能性のある手順として、上図から▲3九銀 △8八飛成 ▲同飛という進行があります。こうすることにより飛車を活用して駒を入手し、後に手番が回ったときの▲9四歩を切り札にするという考えです。しかしこの構想も、後手の左端定跡が先に決まってしまい、失敗に終わります。細かい変化は省きますが、例えば次のような順です。
▲9六歩 △8四歩 ▲4八銀 △8五歩 ▲9五歩 △8六歩 ▲同 歩 △同 飛 ▲3九銀 △8八飛成 ▲同 飛 △1四歩 ▲8一飛成 △9四歩 ▲同 歩 △同 香 ▲同 香 △1六角 ▲同 歩 △1五歩 ▲同 歩 △同 香 ▲同 香 △1一角 ▲同香成 △2二銀 ▲2一成香 △1八歩 ▲2二成香 △1九歩成 ▲2三成香 △2九と ▲3三成香 △3九と ▲同 金 △1五桂 ▲4三成香 △2七桂不成▲5三成香 △3九桂成 ▲6三成香 △2七銀 ▲7三成香 △4八歩 ▲同 玉 △3一金 ▲3九玉 △3八金 まで48手詰
△1六角と歩に取らせることで、一手早く端定跡に入ることができるのです。歩以外の駒が駒台に乗ると、いっそう端に神経を使わなくてはなりません。
この後手の対策に対する先手の作戦もいろいろ考えられますが、現在のところ優勢を確立できるようなものは思いついていません。飛車先をのばす後手の作戦は有効だと言えます。
(取る一手将棋を考える (3) へ続く。)