三段リーグ

上の話題ですが、将棋界を知らない方には意味がわからないような気がするので少し解説を加えます。

将棋界では、四段以上がプロとしてお金を稼ぐことができます。プロになるためには日本将棋連盟新進棋士奨励会に入会し、対局で好成績を収めなければなりません。

四段になる一つ手前が三段ですが、三段から四段に上がるための条件は、三段全員で行われるリーグ戦(三段リーグといいます)で上位2位に入ることです。*1三段リーグは年に2度行われるので、プロ棋士は年に4人しか誕生しないわけですね。非常に狭き門と言えます。ろくに収入のない状態で三段のまま年齢を重ねていくのはかなりのプレッシャーで、プロ棋士で四段に昇段したときが一番うれしかったと述懐する人が多いのもうなずけます。三段リーグは将棋界で最も過酷なリーグなのです。

さらに輪をかけて過酷なものにしているのが、奨励会の年齢制限の規定です。三段でいられるのは原則として26歳までで、26歳になっても四段に上がれなければ退会しなければなりません*2。つまりプロになる道を閉ざされるということです。今回の佐藤佳一郎三段は今年の8月に満26歳を迎えてしまったため、これ以上プロを目指すことができなくなったわけですね。佐藤三段の場合、あと少しだけプロになるための条件が緩ければ間違いなくプロになれていただろうと思われるだけに、いっそう悲劇性が強調されることになります。

奨励会の三段というプロ棋士の卵たちは、小さい頃から将棋しか頭になかったような人々です*3。それだけにプロへの道を閉ざされるということは、即路頭に迷うということにもなりかねません。そのような事態になってしまうのは、プロ棋士として対局で稼ぐ以外に将棋の実力を金銭に変換する手段がほとんどないという、将棋界の裾野の狭さに根本的な問題がありますが、三段から四段になるための条件の厳しさも一役買っています。

*1:3位に2度入っても四段に上がれるのですが、ここでは省略します。

*2:ただし、三段リーグで勝ち越せば次のリーグに参加することができます。しかしそれも29歳が限度です。

*3:もちろん例外はありますが。