大内延介九段暴行事件はこれ以上の進展なし?

今日は大内延介九段は王座戦一次予選の対局があったようですね。そろそろこの件も動きがなくなってきたと見ていいのかなと思います*1。なお、事件の概要は10月11日を、その経過は10月20日をご覧下さい。

結局、公式には理事会よりご報告という短い文章一つで終わってしまったわけですが、どのような背景でこのように沈黙を保とうとしているのか考えてみます。

マスコミの報道を見る限りでは、大内延介九段はもう飛び立ってしまった航空機に乗れないという当然の事実にいらだって、空港職員を殴ってしまったということになっています。私はその前に大内九段の著書を読んだりしているので、さすがにその程度の理由で人を殴ったりしないだろうと思ったのですが、将棋界を知らない一般の人は大内九段のことを常識に欠けた粗暴な人物と受け止めたでしょう。このニュースはYahoo! Japanのトップに掲載されただけでなく、将棋とは直接関係ないサイトでも多く取り上げられましたから、将棋ファン以外の人の目に触れる機会も多かったと考えられます。「キレる大人」というイメージでとらえた人が多かったでしょう。

もちろんどのような理由があろうと大内九段の暴行は正当化されません。しかし、tositanuの「楽天酒棋」日記の10月25日付で次のように示唆されているように、大内九段に同情すべき理由があった可能性もないわけではありません。

新聞報道は誤認されている事がほとんどだそうだ。

もし仮にそのような事情があるのであれば、大内九段が記者会見を開くなどして傷ついた名誉をある程度回復できたかもしれません。しかし、現在に至るもそのようなことは行われず、逆に公式にはできるだけ何も発表せずにすまそうとしている態度を見ると、やはり一般的な見方が正しいと判断せざるを得ません。このような事態に至る背景に何があるのかはわかりませんが、勝手に推測してみると次のような可能性が考えられます。

  • 1. 大内九段は実際に常識に欠け、粗暴な人物である。記者会見などを行うとその事実が明るみに出てしまうため、日本将棋連盟はできるだけ沈黙を保とうとしている。
  • 2. 大内九段には同情すべき理由があるが、日本将棋連盟はマスコミとの対応に自信がないためできるだけ沈黙を保とうとしている。

1. はあってほしくない可能性ですが、現在のところ否定できる根拠は全くありません。いくつか大内9段のプロフィールを確認してみると豪放な性格と書かれているものもあるということから考えると、関係者の間では以前から粗暴であると見られていたのでしょうか。本当にそうなら、きちんと処分を行うべきでしょう。

2. は、日本将棋連盟会長の中原誠永世十段が一度痛い目にあっていることを考えると、あってもよさそうな可能性です。マスコミとの対応の中で「私は寝ていないんだ」のような失言が出てしまうと、二次的な被害を引き起こしてしまいますから、そのような最悪の事態を防ぐために沈黙を保つということはあるかもしれません。しかしそれでは全くの無責任です。もしそのよう考えているのであれば、お粗末というよりありません。

いずれにしても、事件が起こってからできるだけ早い時期に十分な説明、きちんとした処分、もしくはその両方を行うべきでした。失った信頼を取り戻す努力を行う形跡も見られないのは残念です。この状況ではさらに大きな不祥事が起きたとき、致命的な打撃を受けかねないと危惧します。

そして、この事件を将棋関係のメディアがほとんど報じなかったのも奇異です*2。将棋界にはジャーナリズムが存在しないという現実が露わになってしまいました。

*1:もしかしたらこの後に何かあるのかもしれませんが、そうだとしてもいくらなんでも対応が遅すぎと片づけてよい時期でしょう。

*2:よみくまの八面六臂10月16日付でまともな批判が書かれているのと、駒音掲示板の書き込み番号[3977]で武者野勝巳六段が疑問を呈しているくらいです。