一番長いと言われている日
そんなわけで今日はA級順位戦最終日、別名「将棋界の一番長い日」です。とはいっても、名人挑戦は森内俊之竜王に、2名の降級者のうち1名は青野照市九段に決定しているため、最終日の見どころはそれほど残されていません。
このくらいですね。ということで、結果はどうなったのか順に振り返ってみます。
- 横歩取り3三角
- 先手の▲9六歩が比較的珍しい手。おそらく作戦。
- ここから先手はひねり飛車にしたあと、金銀を動かさずに歩と桂馬を動かす大胆な構想に出る。
- 先手が9筋から攻める形を作ったのに対し、後手は5筋から反撃。
- さらにひねり飛車の頭の△7四歩突きが利く形になり、大駒総交換。
- 陣形の差で後手の飛打ちが厳しく、先手は一気に敗勢に。
- 午後11時17分に後手勝ち。
ということで、いきなり島八段の陥落が決定し、森内竜王の9戦全勝も決定し、見どころは一気になくなりました。あとは、順位を決めるだけの戦いとなりますので、適当に振り返ります。
- ▲5六歩 △3四歩 ▲5八飛 △3二飛 という予想外の出だし。
- 先手は相振り飛車の作戦に意表をつかれたのか、攻めに手をかけずにひたすら穴熊で固める作戦。
- 後手はバランス良く、銀冠に囲い向かい飛車に転じ攻撃態勢を整える。
- 普通に仕掛けて、そのまま後手が攻めきり。後手の勝ち。
- 後手中飛車に先手居飛車穴熊。
- 後手も穴熊へ。
- 後手は、7一金6一金型の段階で歩を突き捨てまくって開戦。
- 後手の垂れ歩から大駒交換となり、後手が飛車を先着する展開。
- しかし、後手はチャンスを逃し先手の攻めが速くなりそうな局面に。
- そこで、後手は龍を切って最後の猛攻。
- 対して、先手は角桂交換の駒損に甘んじる気付きにくい受けで受けきり。
- 後手の詰めろが続かなくなったところで攻め合いに転じ、きれいに先手が一手勝ち。
- 後手の一手損角換わり。
- 先手は棒銀。
- 対して後手はさらに手損しての受け。
- 先手が指しやすそうだったが、後手は馬を作って粘りに出る。
- しかし、先手も2・3筋からうまく手を作って後手玉に迫る。
- 追いつめられた後手は最後の勝負手。
- この応対を先手が誤り、飛車取りが後手玉への詰めろにならないという誤算。
- 先手玉が先に詰めろがかかってしまう。
- しかし、運良く先手に受け手が残っていて先手が辛勝。
- 後手は意表の5三銀型三間飛車。
- 先手は向かい飛車に振って相振り飛車に。
- 先手は玉頭を開拓して、金銀で厚みを形成。
- 対する後手の囲いは金無双。
- 先手作戦勝ち模様から、藤井流ガジガジ攻めが炸裂。
- 先手が龍を作り、後手の飛車を取って必勝態勢に。
- 最後に、先手は11手詰を見落とすものの、先手玉に寄りはなく波乱は起きずに先手勝ち。
今回のNHKBS2の中継は随所に工夫が見られて面白くなっていたと思います。羽生善治三冠と先崎学八段だけに解説を任せたのも最善手でした。これでリーグ戦が白熱していれば良かったのですが、それは仕方のないことですね。
最終結果を一応まとめておくと、次のようになりました。
- 9勝0敗(01) 森内俊之竜王(名人挑戦)
- 6勝3敗(02) 佐藤康光棋聖
- 5勝4敗(04) 谷川浩司王位
- 5勝4敗(05) 丸山忠久棋王
- 5勝4敗(07) 三浦弘行八段
- 5勝4敗(10) 鈴木大介八段
- 4勝5敗(03) 藤井猛九段
- 3勝6敗(09) 久保利明八段
- 2勝7敗(08) 島朗八段(降級)
- 1勝8敗(06) 青野照市九段(降級)
青野照市九段が50代でA級を維持したのはすごいことでしたが、B級1組の顔ぶれを見ると復帰はなさそうに思います。BSで先崎八段は「これが最後のA級対局」と言いかけてあわてて言い直していました。私にはそれが正直な気持ちだったように見えました。一方、島八段はよくわかりません。今期の勝率は悪いですが、大事なところでのしぶとさは残っている気がするので勝ち出すとまた復帰もあるのではないかと思います(ファンとしての期待値込みですが)。
久保八段はかろうじて残留できたとはいえ、6連敗して9位というのは普通なら落ちている状況です。来年度にどのように立て直していくかですね。来期は魔の8位ということもあり、今のままでは降級候補本命になってしまいます。
来期はB級1組から深浦康市朝日が上がってきます。勝ち越しは堅いでしょう。となると、自動的にもう一人の昇級者を降級候補にあげざるを得ません。そして、個人的注目は藤井九段です。私はそろそろ不調から抜け出すのではないかと見ていますが、果たしてどうなるでしょうか。