ボビー・フィッシャー、アイスランドに入国

昨日日本を出国したボビー・フィッシャーは、本日アイスランドの首都レイキャビクに到着しました。

AP通信によると、同氏は1972年にソ連(当時)のボリス・スパスキー氏を破り、世界王者となったレイキャビクのホテルに当面、滞在する予定という。到着後、フィッシャー氏は記者団に「長い拘束で疲れた。休みたい」と語った。

アイスランドへ向かう機内で、フィッシャーは次のように激しい非難を行ったそうです。

フィッシャー氏は成田からコペンハーゲンに向かう機内でAP通信に対し、拘束の理由とされた無効旅券所持を否定。ブッシュ米大統領小泉純一郎首相によって仕組まれた拉致だと語り、小泉首相を「ブッシュの言うことなら何でも喜んでやる野郎」「(ブッシュ大統領の)手先」と呼んで激しく非難した。

また、米国は先住民であるインディアンの国であり、住んでいる人間はみな侵略者だと述べ、米国は「非合法国家」、イスラエルは「無法者国家」であると述べた。

フィッシャー氏が今後も同様の激しい米国批判を続ければ、米国政府が改めて反発する可能性もあり、24日付の英紙ガーディアンは「米国当局はフィッシャー氏の脱税容疑を調査しており、アイスランド入りしてもフィッシャー氏の苦難は終わりにならないかもしれない」と伝えた。

ただし産経新聞の記事では、アイスランド入りした後はアメリカへ送還される可能性は低いという見通しが出ています。(27日追記:この記事は共同通信伝です。)

今後は司法省を中心に、同氏の身柄引き渡しをアイスランド側に求めていくが、米国とアイスランドには犯罪人引き渡しに関する取り決めがなく、米国送還は難しいとみられる。

追記:朝日新聞では、逆の見方が出ています。どちらが正解なんでしょうか。

アイスランドは日本と同様、米国と身柄の引き渡し条約を締結しており、フィッシャーさんにとって安住の地になる保証はない。

フィッシャーの奇抜な言動はしばしば見るに耐えないほどであり、それは今回の騒動中も同じでした。極めて穏当な言葉を使えば「個性」とでも言うのでしょうが、「変人」と言っても構わないでしょう。将棋界にもそういった人がいるようですが、何というかレベルが違います。

その発言は他人を傷つけたと思いますが、それだけでなく自分自身を窮地に追い込んでいきました。その結果がこのありさまです。しかし、変人というのはそれだけでは逮捕や拘束される理由にはなりません。むしろ、変人が普通に生きて行けてこそ、自由のある社会と言えるわけです。

今回、フィッシャーが拘束される理由となった直接の原因はパスポートが無効になったことでした。いまだにわからないのは、なぜあのタイミングでパスポートが無効になったのかということです。フィッシャーはそれ以前にもいくつかの国を移動しており、その際にパスポートの更新を行っていました。米国が本気で捕まえる気があったなら、そのときに捕まえられたはずです。無効にされたのは、既に伝えられているようにユーゴスラビアでの経済制裁を定める大統領令に違反したためですが、現在ではその政治的意味はほとんどないと言って良いでしょう。それだけに、米国がなぜフィッシャー拘束にこだわるのかが理解できないのです。

私はこの話題を継続的に追いかけてきました。しかし、将棋ニュースを見るついでにそれは国内のソースをあたっていた程度のものであり、事態の全貌を見るには全く不十分であったと感じずにはいられません。欧米発の英語記事やアイスランドの記事も時間があれば見てみたかったのですが、今の私にとってそこまでするほどではなかったということです。

国内ではもっとも精力的にこの話題を扱っていた戎棋夷説に敬意を表し、改めてリンクしておきます。