名人戦契約問題についていろいろ(3)

今日もいくつかの記事が出ています。

東京新聞の記事は、具体的な数字やこれまでの歴史に触れながらこの問題を解説。さらに関係者に取材してコメントを取っています。

「現在のままでいいと思う」という中堅棋士は、個人的な見解と断ったうえで、「もし朝日に移行した場合、毎日がスポニチと共催する王将戦(契約金七千八百万円)をやめる恐れもある。金銭面だけで言えば、朝日は朝日オープン(一億三千四百八十万円)をやめるだろうし、五年後のトータルで試算すると、現状と、ほとんど変わらない」と話す。

これに対し、連盟幹部の一人は「移管の理由に連盟の赤字が挙がっているが、単なる金銭問題ではない。これは将棋界百年の計の話。このままの状態が続けば、連盟はつぶれてしまう」と危機感を募らせる。

「新聞の発行部数が多ければ当然、将棋ファンも多い。これは大前提。さらに、海外で新聞を発行している朝日なら将棋の国際化を図れるし、テレビのメディア力も違う」と強調する。

他の記事でも具体的な数字はいろいろ出ていますが、王将戦の契約金額を見たのは初めてです。「連盟幹部」の話はよくわからないのですが、間に話したことが省略されていたりするのでしょうか。「テレビのメディア力も違う」というのは何と何を比べて違うと言っているのか読みとれませんでした。

そして、この記事で唯一名前を出してコメントしているのが作家の大崎善生氏です。

背景に、連盟の苦しい財務事情があるとされているが、大崎氏は「本当の厳しい赤字ではない。例えば、棋士個人事業主だが、厚生年金に加入し、連盟が積立金の半分を負担している。国民年金にすれば一億円は浮く。機関誌の売り上げは減っているが、編集部の人事は理事会が握っているのだから、彼らも売り上げ回復のために努力する責任がある」と指摘する。

棋士個人事業主」と言い切ってしまうのはどうかと思います。それはともかく、年金を変えればたしかに1億円が節約できるのかもしれませんが、その1億円は湧いて出てくるわけではなく、棋士がこれまで給与として自分のものにしていた中から追加で支払うか、年金額を下げるかして生まれるお金です。結局は給与の減額と同じですから、棋士に払うお金を減らすと言う方が適切です。年金というのはどの部分を減らすかという案の一つに過ぎず、結局「本当の厳しい赤字ではない」とは「棋士への支払いに減額の余地がある」という主張と同じです。

私の考えを述べれば、その主張は大雑把には正しいと思います。いずれにしろ、赤字が続けばそれ以外の道はないわけですが。

西日本新聞のコラムは、この問題の経緯を紹介し、最後に「禁じ手を使ったのだろうか。」という文で締めています。この主語は日本将棋連盟のようです。判然としないところがありますが、「禁じ手」とは契約違反の行為を指しているのでしょうか。

西日本新聞王位戦の無料中継が素晴らしく充実していることで知られています。将棋の好きな人が上層部にいるのでしょうね。こういう地方新聞社ばかりだとうれしいのですが、そんなはずはなく経営の苦しい地方紙の中には将棋に払うお金を節約したいと考えるところもあるようです。毎日新聞社が仮に撤退することがあるようだと、そのような地方紙の動向が焦点になると思います。その意味で地方新聞社は隠れたキープレイヤーと言えそうです。

ところで話は変わりますが、さわやか日記4月15日(土)16時37分22秒付に次のような文がありました。

全タイトル保持者と理事との会合約1時間。皆真剣です。
ツーといえばカーという人もいます。一方的に自分の主張をする人もいる。何が一番大事なことなのか全く分っていない人もいる。

タイトル保持者とだけ会合を持つというのも珍しいですね。

12日の棋士会には羽生三冠・渡辺竜王・佐藤棋聖は出席していたようですが、名人戦対局中だった森内名人は出席できなかったのでここで初めて話をすることになったわけですね。4人のうち少なくとも2人は対立意見を述べたということなのでしょうか。あるいは「人もいる」はタイトル保持者ではなくて理事ということもあるのかもしれませんが。