名人戦契約問題についていろいろ(34)

6月28日に日本将棋連盟のサイトが更新されました。内容は6月21日に協議が行われたというもので、報告がなぜ1週間後になったのかはよくわかりません。なお、上記リンク先で「毎日新聞社の観堂義憲編集局長(現・常務取締役東京本社代表)」という表現がありますが、これは6月26日に行われた毎日新聞社株主総会で役員人事案が承認され、観堂義憲氏は「常務取締役、東京本社代表、事業担当」となったことによるものです。

次に、6月29日に読売新聞などからの報道があり、毎日新聞社が検討中の案の内容がわかりました。毎日新聞社が一部の棋士に説明した内容が28日に行われた棋士会で報告され、それが新聞記事になったようです。毎日・朝日からは現時点で記事は出ていません。

将棋の名人戦問題で、毎日新聞社が、新たな条件として現行の契約金(年3億3400万円)を維持したまま、3000万円の普及協力金を7年間支払う案を日本将棋連盟理事会に提示する方向で調整していることが28日、分かった。

移管を希望している朝日新聞社との共催ではなく単独契約の方針。名人戦は現在3年契約だが、来年6月に予選が開幕する第66期以降は異例の7年契約としたうえ、スポーツニッポン新聞社と共催している王将戦(契約金7800万円)を維持する。

東京・将棋会館で同日行われた棋士会で、毎日社員から戸別訪問を受けて同案を提示された棋士が理事会側に報告した。複数の棋士がすでに同様の戸別訪問を受けているという。

名人戦の移管を希望している朝日新聞社は今年3月、〈1〉5年契約で契約金3億5500万円〈2〉5年間で7億5000万円の普及協力金〈3〉年間4000万円の公式戦を5年間開催――との案を理事会に提示。現在主催している朝日オープン将棋選手権(同1億3480万円)は廃止する。

名人戦順位戦の契約金額は、これまで少しずつ値上げされてきたと言います。長期契約で契約金額を据え置く場合その定期上昇分がなくなるのですが、7年合計で2億1000万円はそれを明らかに上回る額です*1毎日新聞社にしてみれば、長期契約により今回のようなことが起こりにくくするという意味合いでお金を積み増す理由になると見ているのかもしれません。

ただ、実質的にはこの金額は「毎日案では、朝日オープンが同額で継続された場合、同連盟が7年間で毎日と朝日から受け取る総額は朝日提案をわずかに上回る」というのがポイントなんでしょうね。念のため計算してみます。

  • 毎日新聞社の案の場合
    • 3億3400万円×7年(毎日の名人戦
    • 3000万円×7年(普及協力金)
    • 1億3480万円×7年(朝日オープン)(通常なら契約更新時に若干の値上がりが予想されるがここでは据え置いて計算)
  • 合計 34億9160万円
  • 朝日新聞社に移管された場合
    • 3億5500万円×7年(朝日の名人戦)(5年契約のため、6年目以降は若干の値上がりが予想されるがここでは据え置いて計算)
    • 1億5000万円×5年(普及協力金)(普及協力金が6年目以降どうなるかわからないが、ここではないものとして計算)
    • 4000万円×5年(臨時棋戦)
  • 合計 34億3500万円

この差がどうなるかは、朝日の普及協力金が5年で終わるのかどうかに強く依存します。もし朝日新聞社がその点についてコメントすれば話は違ってきますが、現状でいろんな人のコメントを見るに5年で終わると予想するのが最も妥当だろうというのが現時点での私の判断です。普及協力金が5年で終わるなら、比較する年数を長く取れば取るほど毎日新聞社に有利になります。

最後に日本経済新聞の記事によると、毎日新聞社が単独開催を正式に提案すれば、8月1日に臨時棋士総会を開催して表決するということです。

*1:「将棋ビジネス」考察ノート:契約金額と正会員数によると、6年間(3年間契約を2回)でおよそ2%の上昇となっているので、単純に見ると据え置きとの差は7年間合計で4000万円くらいでしょうか。