11歳の女子小学生が奨励会合格

8月10日に白瀧あゆみ杯で11歳の小学生が勝利として紹介した小学6年生の加藤桃子さんが、奨励会に入会することになったそうです。(記事には書かれていませんが、6級だと思います。)

この度、8月22・23・24日に東京・将棋会館で行なわれました平成18年度奨励会入会試験(東京)に、加藤桃子さん(11・小6)が合格いたしました。本年度の奨励会入会試験において、東京は受験者44名(含女性1名)中13名(含女性1名)が合格、関西は受験者30名で最終試験日が9月2日となりますので合格者数は未定です。

加藤さんが奨励会に入会すると、歴代12人目の女性の奨励会員となります。また、11歳での奨励会入会は女性の年少記録歴代2番目となります。最年少での入会は、2004年入会の現奨励会6級伊藤沙恵(10歳・小5当時)となります。

奨励会に入会した女性で、初段以上に到達した人はまだ1人もいません。どこまで行けるか期待されます。なお、2級以上に昇級すると女流棋士となる権利が得られます。

奨励会試験は、3日間のうちはじめの2日が一次試験、最後の1日が二次試験です。一次試験では受験者同士が対局し、6局のうち4勝以上で通過。二次試験では奨励会員と対局し3局のうち1勝で合格となります。(そのほかに筆記試験もあります。)

8月26日追記:

今月22〜24日に行われた06年度の奨励会試験。1次試験は2日間で受験者同士による対局(計6局)があり、2次試験は書類審査、面接、筆記試験や現会員との対局(3局)が行われた。

桃子ちゃんは、1次試験を5勝1敗の好成績で突破。2次試験の対局では3連敗したものの、内容が良かったことや、過去に女流プロに勝利していることなどが考慮され、見事合格となった。

上で2次試験は3局中1勝で合格と書いたのですが、ときに基準に差が出ることがあるようです。とはいえ3連敗で合格するのは異例のことで、大平武洋四段の書くように「優遇措置」と思われます。このやり方には3つほど問題点があるように思います。

一つは、日本将棋連盟のページでこの事実に触れられていなかったこと。隠し通せるわけがないのに、都合の悪いことは書かずに済まそうとすることが多いように感じてます。5月の棋士総会のときもそうでしたが、出すべき情報をきちんと出してもらわないと不信感が募ってしまいます。

次に、今回の合格の理由。「内容が良かった」ということですが、試験対局は棋譜を採らずに行っていると思います。対局を見ている人がいなければ内容もわかりませんが、全部の対局を見るだけの人員はいないはずです。「過去に女流プロに勝利している」という点を評価するのは一応の理由にはなりますが、女流棋士と本気の勝負をできる機会をもらえたのは大会に推薦してもらう形と思います。そのような機会の差で決まってしまっていいのかという疑問もあります。

最後に、今回の措置が本当に加藤さんのことを思ってのものだったのかということ。私は、奨励会入会に関して優遇制度があっても構わないとは考えていますし、試験が完全に公平でなければならないとも思いません(現在の制度も対戦相手によって難易度が変わってきますし)。しかし、今回のようなやり方では他の受験者や奨励会員にひいきがあったと受け止められても仕方ありません。女子がほとんどいない奨励会ではただでさえ孤立が懸念されるのに、それを促すような方向になっているように思えます。

奨励会は研修会とは違って本当の戦いの場です。実力が劣っているのに入ってしまうとカモにされて、落ちていた方がかえって良かったという状況にもなりかねません。過去に奨励会員だった女流棋士の例でも、6級で入会してから7級に落ちたことがあったと思います。本当にサポートが必要なのは、入るときではなく入ったあとであるはずで、実力を発揮できるような環境を整えるようにしてほしいと強く思います。コメントを読む限り、いろいろあっても本人は前向きにやる気を見せているようなのでがんばってほしいです。

8月30日追記: