名人戦契約問題についていろいろ(60)

ようやく名人戦契約が合意に達しました。外から見ていても長くかかりましたから、当事者の方々にとってはさらに長く感じられたことでしょう。

他の棋戦などを含めた合意内容は、年額で(1)名人戦の契約金は両社合わせて3億6000万円とし両社で折半する(2)将棋文化の普及活動のための協力金として両社合わせて1億1200万円を拠出する(3)毎日新聞社スポーツニッポン新聞社と主催している王将戦を7800万円で、朝日新聞社が主催する朝日オープン選手権を衣替えした棋戦を8000万円で、それぞれ契約する。総計は6億3000万円となる。

これまでの提案などはくぼた屋日記 - 将棋の話題4にまとめられています。日本将棋連盟が受け取る金額の比較をざっとしておきます。最終的な合意は5年契約で次のようになりました。(いずれも金額は1年あたり)

  • 名人戦契約金:3億6000万円(毎日・朝日が折半)
  • 普及協力金:1億1200万円(毎日・朝日合計で)
  • 朝日オープンを模様替えした棋戦の契約金:8000万円
  • 王将戦:7800万円

以上、合計で6億3000万円。

これに対し、現行は名人戦3億3400万円と朝日オープン1億3480万円と王将戦7800万円で合計5億4680万円。当初の朝日新聞社の提案は、名人戦3億5500万円、朝日オープンにかわる臨時棋戦4000万円、普及協力金1億5000万円で、王将戦が現行のまま続くなら合計6億2300万円。したがって、今回の合意による金額は現行よりも8320万円の増、朝日新聞社の当初の提案よりも700万円の増となっています。

ただし、5年契約ですので6年目以降のことは合意されていません。これについて読売新聞は次のように報じています。

今回の合意で連盟が2社から受け取る総額は6億3000万円となり、現行の5億4680万円や朝日が今年3月に単独主催の前提で示していた6億2300万円を上回る。しかし契約の切れる6年目以降は、普及協力金の継続などが未定のため現行を下回る可能性も残されている。

普及協力金については6年目以降も継続するという話はこれまで一度も出ていませんでした。毎日・朝日両社の記事にも言及はありません。朝日オープンが「模様替え」してできる棋戦については、当初の提案にあった「臨時」という文言が消えたため、私は継続に望みを持っています。棋戦が減ることは、将棋ファンにとっての楽しみが直接減ることになるので、できるだけ継続してほしいと思っています。もしこの棋戦が継続して普及協力金が継続しなかったとすると、合計は5億1800万円となり、現状の金額よりも2820万円の減となります。さらに、棋戦が継続しなかったとすると、合計は4億3800万円となります。こうなると大変なので、そうならないようにするために次の契約交渉をがんばるということなんでしょうね。具体的にどうがんばるのか私には思いつかないので心配ではあります。

なお、竜王戦との関連は当面次のようになるそうです。

名人戦の契約金は竜王戦読売新聞社主催=年3億4150万円)を上回るが、読売と将棋連盟の現行の契約は「竜王戦が『最高の公式戦』」としており、契約済みの第21期(08年)が終わるまでは「竜王戦の序列1位に変更はない」(将棋連盟)という。

次回の契約更改で読売新聞社が契約金を上積みして最高額を維持するのかどうかわかりませんけれども、その交渉もまた重要になりそうです。

普及協力金について、毎日・朝日は次のように書いています。

普及協力金は、将棋連盟の具体的な案件に即して両社が拠出する。

また、名人戦契約とは別に、将棋普及のための協力金として両社で年1億1200万円を5年にわたって連盟に支払う。棋士が小中学校で将棋を教えて次世代を育成するといった連盟の事業に使われる見通しだ。

契約金とは異なり普及協力金については折半とは書かれていません。前回読売新聞社が報道した提案では朝日新聞社の方が額が大きかったので、朝日新聞社の方がたくさん支払うことになるのでしょう。朝日新聞社の立場からは、普及協力金は主催を引き受けさせてもらうための一時金というような意識があるのかもしれません。

次の部分は興味深いですね。

ただ、共催の形だけをとっても両社が1年交代で七番勝負を運営する案があったほか、契約金の額についても、共催という前例のない事態にどう対応するかの難しさを抱えた交渉だった。

将棋に限らず、大手新聞社どうしの共催はほとんど前例がありませんので、手探りの交渉だったと思います。というよりも、これからまた大きな苦労があるかもしれません。

「対等な立場」が具体的にどのような運営になるのか、順位戦の制度は変わるのか、朝日オープンがどうなるのか、普及協力金が何に使われるのかなど気になることはまだたくさんありますが、とりあえず最悪のシナリオが回避され一応の解決に至ったことは良かったと感じています。これまでに将棋界が負った傷は決して小さくありませんけれども、起きてしまったことはもう取り消せないので、今からできることを着実に進めていくとともに、同じような失態のないように対策を取っていくしかありません。

これから新聞・雑誌などで関連報道などがまた出てくると思いますので、できるだけ拾っていきたいと思います。

ところで、この問題の認知度がどの程度化のアンケートがありました。

どう解釈すべきかは難しいところです。

12月28日リンク追加