著作権の賠償額算定

掲示板でらぴゅたさんから反応をいただきました。

アマの将棋HPの宣伝効果は金額に直すと如何ほどの価値があるかと言うことも、棋譜著作権の議論で考えて頂きたいと思います。

これは「棋譜をウェブ上で掲載することによる宣伝効果がもたらす利益が大きいのなら、棋譜掲載が認められるべきだ」という考え方に基づいたご意見だと思います。私もその意見に賛成なのですが、著作権法を巡って議論する際にはその考え方を採用できない理由があります。というのも、著作権法第114条第2項に次のような規定があるためです。

著作権者又は著作隣接権者は、故意又は過失によりその著作権又は著作隣接権を侵害した者に対し、その著作権又は著作隣接権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額を自己が受けた損害の額として、その賠償を請求することができる。

不法行為による損害賠償を求める際には、損害が発生したことを賠償を求める側が立証しなければならないのが原則です。しかし上の条文が適用されると、たとえ損害の発生がなくても「受けるべき金銭の額に相当する額」が自動的に損害賠償額として認められます。著作物の利用が著作権者に利益をもたらしていたとしても、損害賠償に影響することがないのです。困ったものです。
掲載してもらうのがありがたいからどうぞ掲載して下さいというのは現実によくある光景ですが、そのような判断を下せるのは現状では著作権者だけです。著作物の利用できる範囲がもっと広がってくれればいいのですけど、現在はどんどん利用範囲が狭められています。困ったものです。