コーヤン流三間飛車 持久戦編

41手目 ▲4五歩まで

コーヤン流三間飛車の極意 持久戦編(中田功著、毎日コミュニケーションズ)を読む。

島ノート 振り飛車編で紹介され一躍有名になった中田流三間飛車の本。急戦編では見たような手順しかなく、そんなものかという感想しかもてませんでしたが、対穴熊にこそ独自の本領を発揮するだろうと期待して読みました。

しかし、正直なところ期待はずれでした。毎コミの定跡書はページ数を222頁に届かせるために、埋め草として自戦記を載せてあることが多いのですが、この本では自戦記が82頁もあります。しかも自戦記は定跡編で触れられた手順とは関係のない将棋が多く、定跡の応用という意味合いもありません。必然的に定跡部分は手順を羅列しただけのものとなり、体系化にはほど遠い内容です。この本を読んで三間飛車を始めようと思っても、実戦に直接応用することは難しいように思います。

もう一つ不満なのが三間飛車側が先手番の局面しか扱っていないことです。一つ一つ見ていくと居飛車の駒組みが一手遅れているために成立している手順も多く見られ、三間飛車側が後手番のときにどうなるのかを書いていないのは不十分と言わざるを得ません。例えば上図は100頁下の図ですが、先後逆のときはこの▲4五歩が入らなくなり、△7五歩の攻めで苦しそうな気がするのですがどうなのでしょう。この戦法は先手番専用というわけではないはずですから、どちらかに絞るのならば後手番に絞ってほしかったです。それとも、急戦編では後手番の対応を書いたことが売りになっていたことを考えると、コーヤン流三間飛車は後手番ではまだ自信なしということなのでしょうか。

編集者にはもう少し工夫してほしかったと思います。