ブラウザでの閲覧と著作権

doublecrownさん近況と更新来歴でここ数日著作権関連の話題について興味深い話を書かれています。本当はそれに関して書きたいのですが、今日は6月6日付のコメントで話題になったことについて、自分の中で区切りをつけておきます。

まず何が問題なのかを説明しましょう。ブラウザでウェブページを閲覧するときには、必ずメモリ上にそのページのデータが再現されます。メモリ上にデータが蓄積される場合、蓄積される期間はそのページを見ている間だけだったり、コンピュータの電源を切るまでだったりいろいろですが、いずれにせよデータのコピーが行われているわけで、形式的には著作権法でいう複製にあたり著作権侵害になると解釈することも可能なように見えます。しかし、普通にページを見るだけなのにいちいち著者に許可を求めなければならないというのは明らかに不合理です。

そこでこの行為が著作権侵害とならないために、このデータの一時的な蓄積をどう判断すべきかということが問題となります。この問題は「一時的蓄積」の問題と呼ばれ様々な議論が行われており、未解決の課題の一つとなっています。可能性を大きく分類すると次の二つに分けることができるでしょう。

  • 複製を狭くとらえ、一時的蓄積は複製ではないとする。
  • 一時的蓄積も複製であるが、例外的に著作権が及ばないとする。

国内では、従来前者の考え方が多くとられていました。例えば下は1973年の著作権審議会報告に書かれた文章です。

内部記憶装置におけるプログラムの瞬間的かつ過渡的な貯蔵を著作物の「複製」に該当するものと解することには無理がある

しかし情報技術の発展につれて、「一時的蓄積」といっても必ずしも統一的にとらえられない事例も報告されるようになりました。例えばRAM上での記録でも、コンピュータの電源を24時間切らずにおけば、メモリ上に保存されたデータをいつでも取り出すことが可能になります。

また海外ではむしろ後者の解釈が主流となっており、一時的蓄積も複製に含まれると考えるべきではないかという議論も多く見られるようになりました。その結果、著作権審議会でも詳細な検討がなされましたが、2001年の報告では、次のように結論を先送りする形となっています。

法改正の必要性については、実際に法制面での対応が必要な具体的な状況の有無、関連するビジネスの動き、国際的な場における検討の状況等を引き続き注視しつつ、必要に応じ、検討することとする。

この問題についてはほかにもいろいろな視点がありますが、ここではこのくらいにとどめておきます。