飯島将棋盤
10月1日に販売開始になった飯島将棋盤の機能を検証してみます。結論を先に書くと、お金を払うだけの価値は見いだせませんでした。先に、先日書いた文章をお読みいただくと、わかりやすくなるかもしれません。
まず、Rocky-and-Hopperの寄せの構造の棋譜再現アプレット 徹底比較の「機能比較 一覧表」に準拠する形で評価してみます。
- 解像度(横x縦):285x315
- KIFファイル:要コンバート?使えない?*2
- 対応ブラウザ:各種
次に飯島将棋盤が売りにしている機能などについて検討してみます。
- 盤面が小さい
-
「
最大のメリットは、Web将棋盤がコンパクトに設計されているため側に文章を入れるスペースを確保し易いこと
」ということです。たしかに横幅285ピクセルというのは、Shogi Viewer Appletに次ぐ小ささです。Banと同じ発想で、文章の中に将棋盤を埋め込むという発想なわけですね。個人的には「いきなりJAVA攻撃」は好きではないのですが、まあ好みの問題と言ってもよいと思います。
ただ、285ピクセルという大きさがどうかという問題はありますね。ディスプレイの解像度がどんどん大きくなっている情勢の中で、高解像度のディスプレイでは逆に小さすぎるという可能性もありそうです。例えばOPERAには、文字と普通の画像を一緒に拡大する機能がありますが、JavaAppletはそのように拡大することはできません。
とはいえ、その際には画像ファイルを入れ替えて大きめにすることは、技術的には可能でしょう。
- 棋譜表記の「左」「右」などを表記できる
-
この機能は他にはKifu for Javaにあるだけで、珍しい機能と言えるでしょう。しかし、棋譜再現アプレット 徹底比較にこの項目がないことからも、あまり重視されていない機能ではないかと思います。
プログラムを考える人にしか通じないかもしれませんが、この機能のためにプログラムがだいぶ複雑なものになっていると思われます。コンパクトさを目指すのであれば、この機能を省いてファイルサイズを抑える方向の方がよかったのではないかという気がします。
そうでなければ、勝田将棋盤のように「左」「右」をウェブページ側で指定するのは有力でした。「左」「右」を判断するような重い処理は閲覧時ではなくページ作成時に済ませておく方が好ましいと思います。
結局、このアプレットを用いるメリットは、シンプルな外見にあると言いきってよさそうです。技術的には軽い画像を使っただけのことで目新しくはありませんが、無料であれば需要はそれなりに存在すると思われます。
次に飯島将棋盤のデメリットを検討してみます。
- 対局者名が表示できない
言うまでもなく、これはかなりネックになりそうな気がします。文字数制限はあってもいいので、バージョンアップで対応してほしいところです。
- 途中盤面でのコメントを入れられない
これはあえて省いたのでしょう。用途を狭めることになりますが、それも戦略ということですね。
- 自動再生機能がない
個人的にはなくても構いません。しかし、……
- 矢印キーで再生できない
そのかわり、これはかなり困ります。よく使われるアプレットはそのあたりはきちんとしているのですが。
- KIF形式からのコンバータがない?
これはよくわからないのですが、1,200円もの価格をつけているのにマニュアルに一切の説明がないというのは、コンバータが存在していないということなのかなと思います。*3もしそうだとすると、とても有料のソフトとは言えないと結論づけざるを得ません。
現在、有料で供給されているのは駒音コーポレーションが制作し竜王戦倶楽部やNIKKEI NET 将棋王国などで利用されているプログラムだけだと思いますが、これは棋譜をウェブページに掲載する過程を簡略化したことに特徴があるという話です。
その点、飯島将棋盤はこれといった工夫が見られません。1,200円の価値があるとすればこの部分しかないと考えていましたが、やはり難しいようです。
現在将棋サイトを運営している人は数千人くらいしかいないわけですが、その中でもお金を払ってもいいという人はごく一部に過ぎません。どうせそれほどの収入は見込めないということで、飯島将棋盤はそのうち無料化されると予言しておきます。無料化されれば、Kifu for Java、ES将棋盤、勝田将棋盤の三強に次ぐ位置につけることは可能と思います。