女性プロ棋士誕生への道は果てなく遠い

将棋界に詳しくない方は女性プロ棋士が存在しないことをご存じないかもしれません。相撲界と違って女性を拒絶する規則があるわけではありません。野球やサッカーと同じように、男性プロに匹敵する実力のある女性が出てこないだけの話です。「女流棋士」という制度はありますが、それは男性プロ棋士とは別枠で、トップの数名を除けば女流棋士は実力も待遇も男性プロに全く及びません。サッカーのLリーグのようなものですね。

プロ棋士になるには奨励会という養成機関に所属し、その中で行われる将棋を勝ち抜かなければなりません。奨励会でのクラス付けは6級から三段で、三段から昇段して四段になると初めてプロと呼ばれることになります。この段級位はアマチュアの段位よりも非常に厳しいものになっていて(というかアマの段位が甘いのですが)、奨励会の6級でもアマ三段か四段くらいの力があります。そんな中で勝ち抜いていくのは並大抵ではありません。とりわけ三段から四段に上がるためには、半年に一回行われる「三段リーグ」で上位2位に入る必要があります*1。例えば、現在は三段は27名います。2位に入れば将棋で食べていける地位になる。入れないまま年齢制限を迎えれば将棋しかできないまま放り出される。小さな頃からプロ棋士を目指してひたすら将棋を指してきた若者にとって、この差はとてつもなく大きいということはおわかりいただけるでしょう。

そんな厳しい状況でも、野球やサッカーと違い、将棋界でプロを目指す女性は少数ながら存在します。例えば、岩根忍氏はこれまでで最高の1級まで到達していたのですが、先日奨励会を退会したそうです。正直なところ、初段になれないようでは四段になるのはまだまだという感じですね。

このように将棋界に女性プロが誕生する見通しは全く立っていません。これを人間の生まれついての男女差に帰着させようとする見解もありますが、囲碁界ではこれよりも女性の活躍が多いことを考えるとそれ以外の要素があることは否めません。個人的には奨励会員の過酷な現状が改善され、プロへの門戸が広がらないと女性プロ棋士は誕生しないのではないかと思います。わずかに可能性があるとすると、実力あるプロ棋士の娘が挑戦するケースならわからないかもしれません。

*1:ただし、3位を2度でも一応は上がれることになっています。しかし詳しくは述べませんが、その場合フリークラスから始めることになり、非常に不利な立場に立たされます。