米長哲学

flores channelのfloresさんによると、『人間における勝負の研究』(1982年、祥伝社)で米長哲学に該当する記述が登場するそうです(http://d.hatena.ne.jp/flores/20031129#p2)。どうもありがとうございました。

昭和57年というと、ちょうど米長邦雄永世棋聖の全盛期を迎える頃ですね。私も家にある本を少し見てみましたが、それより古いものは見つかりませんでした。雑誌には何かあるかもしれませんが、単行本ではっきり書かれたのははそれが最初の可能性が高そうです。

ところで、私は「米長哲学」を若干誤解していたようです。『米長将棋勝局集』(1984年、講談社文庫)の解説文で河口俊彦現七段がその文章を引用しています。

「いわゆる『この一番』というのは、必ずしも『でかい勝負』ではない。私のみるところ、一生のツキを呼ぶとか、何年間かのツキを呼び込む大きな対局とは、実は自分にとっては一見、何の影響もない一番、その勝敗が自分の進退には直接影響がないけれども、相手にとっては大変な意味を持っている勝負なのです」

中略

『人間における勝負の研究』の一節だが、米長の勝負観を知る上で興味深い。これ等のことは、言うは易く行うは難し、である。

私は「いつでも全力で戦うべき」程度にとらえていたのですが、読んでみるとそれを越えて「全力をやめるとその後に運命に悪影響を与える」という意味まで含んでいたのですね。いずれにしても偉大な考え方だと思います。