近代将棋の方向性

将棋タウンのisodaさんは、今月から近代将棋の定期購読をやめるそうです。たしかに私にとっても近代将棋は存在感が薄いように感じます。

そのように感じるのは、私の関心が主に将棋の技術的な面にあるからかもしれません。例えば、観戦記に関しては、最近将棋世界の内容が改善されたのに比べると見劣りがします。タイトル戦などの観戦記を読むとき、ウェブ中継などで事前に情報を得た上で、不明とされていた局面がどうだったのかを気にしながら読むのですが、近代将棋の観戦記はそのような場面をあっさりスルーしていることが多いように思います。かといって、対局室内外の情景描写が書き込まれているわけでもなく、ひたすら手順を追うだけの文章になっているイメージが強いです。月刊誌という媒体の性質上、速報性で勝負することはできません。独自の要素のない観戦記であれば、月刊誌に掲載される価値はないと思います。

おそらく、近代将棋は観戦記ではなく、別の方面で勝負しようとしているのだと私は考えています。例えばそれは女流棋界の情報であったり、アマチュア棋界の情報であったりするのでしょう。これは初心者向けではなく、もっとディープな情報です。書店での扱いが少ない近代将棋としては、ディープな方面に力を入れるのは誤りではありません。技術的な方面では将棋世界に勝てないし、初心者への売り込みではNHK将棋講座に勝てないので、その隙間を狙うという戦略ですね。

別の言い方をすると、近代将棋は「将棋」ではなく「将棋界」を扱おうとしている。将棋世界でもなくNHK将棋講座でもない狭い層をターゲットにしているのだろうと思います。それで採算が取れるのかどうか私にはわかりませんが、少なくとも私の興味とは方向性が違うというのは確かです。

1つフォローをしておくと、近代将棋に掲載される詰将棋に関しては、昨年看寿賞を受賞した明日香など質の高いものが多くあります。これに関しては将棋世界より上と言って良いでしょう。