地方で知る新たな魅力
「軽い気持ち」で引き受けた教室は、活気にあふれていた。玄人はだしの居住まいで盤に向かうお年寄り。駒の動かし方を覚えたばかりの小学生のまなざしも真剣だった。新潟では珍しいプロ棋士じきじきの指導に、参加者の目が輝いている。対局では味わえない充実感だった。
「そこには自分が忘れかけていた、将棋を楽しむ空間があった。この人たちにもっと将棋の魅力を伝えたい」
毎月のように新潟の教室を訪れては関係者の家に泊まり、将棋論を語り合った。「対局以外の魅力を教えてくれた新潟に根を張ってみよう」と、心に決めた。
プロ棋士にとって第一の仕事は対局ということになっているわけですが、このような活動も重要なことだろうと思います。特に、東京や大阪から離れた地域には棋士が出向く機会が少ないので、「普及」に一役買うことになるでしょう。