日経一面に将棋の話題が

19日付および22日付の日本経済新聞朝刊1面で、将棋の話題が取り上げられました。

激指の成果

まず19日付では、1面左上の「ニッポンの博士 大量養成 逸材とゆがみ」という見出しの記事が出ています。この中で、将棋プログラム激指の開発者 鶴岡慶雅氏が写真入りで紹介されています。

鶴岡は人工知能研究と将棋ソフトの情報処理の手法で工学博士号を取得。手法はライバルの将棋ソフトに採用された。成果は自動英文解析に応用している。

この記事は将棋を扱ったものではなく、博士号を取得する日本人が増加する中で、成果を上げている人と就職もままならない人に分かれてきている現状をリポートしています。そのような文脈で、鶴岡氏は頭角を現す若手研究者の一人として紹介されているわけです。

1998年に日経産業新聞で書かれた記事に見られるように、「日本で将棋ソフトを組織的に開発しようとすると、国立研究機関や大学でも「お遊び」と見られがちだ」という状況がありました。それが現在では、将棋ソフトの開発も立派な研究テーマと認められてきているということですね。

羽生とネット

22日付では、1面トップの特集記事「ネットと文明 時代進める『知の鍛錬場』」に羽生善治四冠の話が写真付きで掲載されています。分量は少ないですが、他の話と話をつなぐ役割を果たしており、記事の中ではメインの位置づけと言ってよいのではないかと思います。

記事は次の文章から始まります。

「羽生、降臨か」。インターネットで将棋の対局ができるサイト「将棋倶楽部24」。その観戦チャットが沸き立つ時がある。

日経1面で将棋倶楽部24ということばを目にするとは思いませんでしたよ。これはあのdcsyhi伝説を指しているのではないかと私は解釈しました。真部一男八段をして「詮索は無用なれど、皆の頭に浮かぶ人物、口には出さねど“あの男”そう、ほかに誰がいるというのか。*1」と書かせた人物がdcsyhi氏です。

巷(何処)で言われているように、dcsyhi氏=羽生四冠なのかどうかはわかりませんが、この記事の終わりの方には、羽生四冠の言葉として次のような記述があります。少なくとも否定はしていない、と。

「私もネット愛好者かって?さあ?」

「愛好者」かどうかはともかく、お気楽カフェVol.9 羽生善治四冠によれば、「ええ、たまに指しますよ。」ということのようです。しかも過少申告でないのですから、誰にも引けを取らないだけの高いレーティング点を持っているということになりますね。

話がだいぶそれましたが、記事全体の内容は、まずインターネットの利便性を強調しその中で囲碁井山裕太四段が紹介されています。

そして、例の「高速道路」の比喩からネットでの競争、そしてその後の「渋滞」へと話が進みます。この比喩は完全に将棋界を離れて一般に通用するものになったと言えそうです。これからはむしろ、この比喩は将棋から始まったということを知らずに使う人が増えてくることでしょう。まあ、もともとがそうした文脈で使われることを想定した発言だったと思いますけども。

*1:将棋世界2004年8月号より。この部分は『升田将棋の世界』に収録されており、必読です。