Bonanzaと対戦する棋士たち

Bonanzaとの対戦がその筋で流行っているという話を、10月4日の「その日」に向けてでお伝えしました。この話題が、昨日発売の週刊文春10月27日号の先崎学八段のコラム「先ちゃんの浮いたり沈んだり」でも書かれています。

対戦を仕掛けているのは「ネット中継のスタッフのM氏」(上のリンク先を見れば丸わかりですが)。Bonanzaがいくらよくできているといっても、奨励会有段者とかプロ棋士のレベルになればそうそう負けることはないのですが、100%勝つとなると簡単ではないようです。

M氏は調子に乗ってボナンザを使って次々と勝負を挑みはじめた。ヒマな棋士をつかまえて「五連勝できるかどうか」といくのである。五連勝のところは人によって三だったり七だったりするが、まあこういわれると人間として後には引けない。いざ勝負、となる。

ところが、たしかに人間の方がずい分強いが、確実に連勝をするというのは難しく、たいがいM氏の勝利に終る。見ていると、何連勝かして、あと一、二番というところで負けるケースが多い。まことにプレッシャーというものは凄いものである。

かくして、若い衆対ボナンザの対局は、わずか数週間の間に、すっかり控室の風物詩となった。

いずれコンピュータ対プロ棋士の公式な勝負が行われるときに、この経験は役に立つことでしょう。ただし、Bonanzaは他のソフトに比べてやや特殊な棋風を持っているようなのでその点には注意が必要です。

一般論としては、ソフトの弱点は中盤にあります。ですから、人間にとっては中盤をできるだけ長くした方が有利になる。つまり終盤は斬り合いに行かずにできるだけ局面を落ち着かせる。序盤はできるだけ早く定跡から脱する。このような戦略が対コンピュータに有効と考えられます。

しかし、序盤で早く定跡から脱するといっても、悪手を指して不利になったのでは何をしているかわかりません。有力な手で定跡から脱する必要があるわけです。つまり、新手ということですね。とはいえ、プロ棋士が有力な新手を研究したなら公式戦で使いたいと思うでしょう。対コンピュータの対局で新手を出してもらうには、それ相応の報酬がなければならないでしょう。そういう意味でも、コンピュータ対プロ棋士の対局の待遇は重要な要素になってきます。

とはいえ、それを考えるのは若手棋士の役割ではないですね。棋士とコンピュータソフトの対局についての件について先崎八段は「変に肩肘張らないほうがいいような気もするのだが。」と書いているのもその通りだと思います。人間同士で指すのも楽しいし、コンピュータと指すのも楽しいということでいいのではないでしょうか。

最後になりましたが、詰将棋メモのTETSUさんが作成されている反応リンク集が独立したエントリになりましたので、改めてリンクしておきます。