対局だけで生活できない棋士

駒音掲示板に次のような書き込みがありました。(他の書き込みはあまり読んでいません。)

近況報告 投稿者:マリオ 投稿日:2005/12/24(Sat) 01:08 No.12308

サイゾーの記事は友人が書いたものですから大むね本当の話です。 竜王戦倶楽部、順位戦中継、順位戦CD、近代将棋、観戦記など将棋界に関わるほとんどの仕事がなくなりました。 まあ「提訴するとこうなるよ」と脅迫のような忠告も受けていたので覚悟の上のことですが、じっとしていると1千万円ほどの減収になり干上がるので将棋以外の仕事をすることになりました。 特に古里はありがたいもので、高校時代の友人が色々な仕事を持ってきてくれる。 ホームページの制作依頼が2件。IT担当の顧問として当分の間給料をくれるそうです。 マンションの管理人は2時間に1度の見回りがノルマ。「他の時間帯はパソコンの前に座っていてもいい」そうなので、HPの制作と原稿執筆の時間には事欠きません。 同級生が工場長をしている納豆工場は「働いた!」という実感のある職場。 時給650円はさすがに見習い期間のものですが、妻も生まれて初めて内職というものをしたりで支えてくれるので、空いた時間はすべて働くことにしました。

これまでの人生は将棋に関わる仕事しかしたことなかったので、実にしんどいけど新鮮な日々。 小説なんてものに取り組んでみたりして、マリオは生まれ変われるかも知れません。 当面の成果物として来年1月中旬には将棋の中級上達本が出版されます。 自信作ですので、ぜひお買い求めください。

これは駒音掲示板のNo.12266の書き込みを受けてのもの。12月19日発売の「サイゾー」2006年1月号に武者野勝巳六段の話が出ているそうです。上記引用中の「友人」とは高須基仁氏。親しい関係にあるようです。

マネーの虎』などの出演で知られる出版プロデューサーの高須基仁氏。兄貴分の彼は中央大学経済学部卒で米長氏の後輩に当たるのだが、マリオが訴訟に至った経緯を聞いて憤慨し「全面支援」を約束してくれた。

この高須氏の記事で注目すべきは、「納豆工場」という言葉の持つインパクト、そしてその言葉を選んでくる言語センスだと思います。

一般論として言えば、対局だけでは生活に必要な収入を得られない棋士は、対局以外の仕事をしなければなりません。とはいえ、プロになれたということはそれだけの能力があったということですから、その能力を生かすような仕事をできることが望ましいと言えます。一番ありそうなのは、やはり将棋を教えることでしょう。

現在の将棋界の問題点の一つは、将棋を教えることによる収入確保が難しいという現状にあると思います。現在、子どもへの将棋の普及ということでプロ棋士・指導棋士など様々な活動が行われており、これが実を結べば将棋のレッスン市場と言うべきものができるのではないかと期待しています。

武者野勝巳六段の場合、「夢は「日本一のティーチングプロ」と呼ばれるようになること」ということですから、そういう方面でもがんばってほしいですね。ただ、武者野六段の場合は、フリークラス宣言をしていることから話がまた複雑になるように思います。