日経に将棋プロ制度に関する記事

日本経済新聞の4月29日付朝刊文化面に「揺れる棋士制度、将棋連盟が改革案 財政難打開へ妙手探る」という見出しの記事が出ています。現在ウェブ上では公開されていませんが、何日か経ったら将棋王国でアップロードされるかもしれません。

名人戦問題がなければ、プロ編入制度や順位戦制度などの改革問題が一番の話題となっていたはずでした。話題性が減ったとしてもその重要性は変わるものではありません。その意味で、ここでこの内容を持ってきたところにセンスを感じます。さわやか日記4月29日(土)16時47分18秒付では「それにしても良く取材して、本質に迫っている点が多いのには感心します。やっぱり日経の神谷記者は大したもんだ。」と書かれており、その点に関しては私も同感です。

プロ編入制度の検討については、以前報道されたとおりの内容が書かれています。注目されるのは、順位戦制度などプロ制度全体についても言及されていることです。

最下級のC級2組には、毎年四人の新四段が加わり、今年度のリーグ戦には四十七人が参加するが、C級1組に参加できるのは、わずか三人。新陳代謝が阻害されているといわれ、昇級者・降級者の人数見直しや下位クラスの人数制限などが議論されそうだ。

順位戦最下級のC級2組から降級した棋士などが所属するフリークラスのあり方も課題だ。順位戦以外の公式戦には参加でき、成績が振るわなくても引退に追い込まれるまで通常十年の猶予がある。だが、抜本的な見直しは避けられない。

新陳代謝を活発にすることは重要だと思います。見ていると、降級点3回で落ちることになるC級2組と降級点制度が使われる中で最も上のB級2組で、床が厚い印象を受けます。ただ、上の書き方だと引退棋士を増やすと言いたげですが、私は現役棋士の人数は減らさなくても良いと考えています。そのかわり、現役であっても成績が振るわなければ生活に十分な対局料をもらえないようにしておけば、チャンスはそれほど減らすことなく棋士に支払われるお金の総計は同じようにできるはずです。この背景にあるのは、下位においては成績がそれほど変わらないならば報酬もそれほど変わらないようにした方がよいという考え方です。大きな段差を作るよりも、なだらかに広く薄くということで。

連盟は制度改革委員会の発足に先立ち、公式戦の主催各社にアンケートを実施。その結果、順位戦以外の棋戦でも、成績不振者の出場を制限すべきとの意見が相次いだ。

新聞社の主催する棋戦では、新聞に掲載されない対局が多数行われています。そして、そういった対局でも対局者に同様の対局料が支払われています。新聞社にとって見ればそういった対局は(少なくとも直接的には)新聞社に利益をもたらさないのでできればやめてしまいたい、そう考えることは自然な成り行きと言えます。とはいっても、新聞に掲載されない対局でも好局が見られることは確かで、対局数の減少はファンの目から見れば不利益です。一局あたりの対局料に下限があるからこうなるのであって、それをなくせば対局数自体は維持したまま続けられるのではないでしょうか。

どのような案が出るにしても、財政的に苦しい状況が続く限りは、下位の棋士が十分な報酬を受けられなくなることは将来的に仕方ないと思われます。ただ、それが連盟内の政治的に実現可能となるためには、対局以外の部分で稼げるようになることが求められそうです。それをどうするかが構造的な課題となっているわけです。この点については書き出すと長くなるので、いつかきちんと書きたいと思いながら月日が経っている状況です。

記事の終わりでは、日本将棋連盟の経営にプロ棋士以外の人間が関わるようにした方がよいという意見が棋士の間にもあることが紹介されています。もし名人戦問題が原因で理事会が総辞職というようなことになったとすると、今度はそうするしかないとは思いますが、では誰が引き受けてくれるのかという難しい問題があります。再建に成功しても多額の報酬がもらえる仕事ではありませんし、改革しようとすれば抵抗されるのは目に見えていますし、社団法人という性格から理事に与えられた権限はそれほど大きくはありませんし。それでもやると言う人がいるといいですね。