名人戦契約問題についていろいろ(24)

本日は新しいリンクはあまりありません。

それから、毎日新聞名人戦第3局観戦記が14日から始まっており、序盤は対局の内容そっちのけで名人戦について語っています。序盤で手に触れない観戦記はたまにありますが、今回は規模が違う感じ。福井逸治氏は6年前に毎日新聞を退職した方ということで、思い入れがあるのでしょう。

それから、14日発売の週刊将棋5月17日号では共催案について小さく触れています。「素晴らしく明るい記事」がどれかはやはりわかりませんでした。

次に、14日に更新された米長邦雄の家で次のような記述がありました。5月9日にお伝えした週刊将棋で編集長交代へに関連した話です。

■正しい情報

週刊将棋の小川明久前編集長が理事会にお詫び。これは5月12日の東京将棋記者会と理事会の質疑の中でのことです。

米長会長の答弁の中から
「今日お集まりの皆さんの書かれた記事、各社の報道については理事会からは何も申し上げておりません。本当は抗議したい事、もう少し好意的に報道して欲しいと思うことは多々あります。しかし、皆さんには日頃大変お世話になっております。理事会は抗議や悪口になるものは一切控えておりました。
然し、日本将棋連盟の会員、組織内からの報道は正します。週刊将棋日本将棋連盟発行のものです。小川明久氏の書かれた内容は一応おくとして、左欄の時系列的な表に決定的なミスがあります。
3月22日に理事会は朝日新聞社と契約したかのように明記されていますが誤りです。あくまでも申し入れがあっただけで、理事会は全く白紙であります。この密約説を故意に流すようなことは困ります」
「私は新聞報道等で確信しておりましたが」と小川前編集長。
「あくまで理事会はじっとしているのです。何ら抗議はしておりません。しかし将棋連盟発行のものだけは看過出来ないということです」

このやりとりのあと小川氏はすっと立ち上がるや一礼をし、「申し訳ありません」と男らしい。多くの記者が居る中ですからなかなか出来ることではありません。尚、小川氏は出世して編集長の上のポスト専任となりました。先週話し合いをした中原副会長、田中常務も快諾して一件落着です。

理事会は全く反論も抗議もせずに今日に至っております。さすがに週刊Gの記事や、一方的な小冊子を作成する等は少々やり過ぎではないかと思います。

着地の後どうなりますかね。大丈夫ですか。そろそろ全てを公開でしょうか。

まず一般的に、マスコミに誤った情報が出た場合は、そのマスコミに指摘して訂正を要請するとともに、自分のウェブサイトなどで広報すべきだと思います。誤った情報を見て困るのは読者ですから、まず読者に正しい情報を伝えるよう努力するべきではないでしょうか。それは悪口ではありません。今回の件について、米長永世棋聖がどの部分が「ミス」と主張したのかを明示したのはこれが初めてです。そして、日本将棋連盟公式サイトや週刊将棋の紙上では訂正等は行われていません。「看過出来ない」にしてはすべきことをしていないと感じます。

次に、問題となった週刊将棋5月3日号についてですが、米長永世棋聖が指摘した部分には次のように書かれています。

3月22日 理事会が朝日への移行方針を決定。

私にはこの文だけでは「朝日新聞社と契約したかのように」は読めません。これが問題なのであれば、週刊将棋4月19日号で「朝日新聞社と連盟理事会が契約金などの条件を煮詰め、合意したところで理事会はその旨を毎日新聞社に通知説明した」とある方がよほど問題になるのではないでしょうか。こちらに反論せずに5月3日号になってから問題にし始めるというのは、結局、「一応おく」とされた小川明久氏の文章を問題にする方が主題だったのではないかと推測しています。

さて、次に、ここ数日の動きでは、まず共催案がだめになりそうということがあります。まあこれは毎日が受け入れるわけがないということで予想通りでしょうね。

ただ、毎日新聞社が通知書を撤回しても自動継続とはならないと態度を明らかにしたことで、一定の進展が見られる可能性が出てきたように思います。

同問題で毎日新聞社はこの日、従来通り通知書の撤回を求めた上で、「通知書の撤回により第66期以降も契約が自動的に継続されるとは判断しておりません」とする文書を、米長会長あてに提出した。これまでも同様の見解を明らかにしていたが、改めて説明した。

これは米長邦雄の家まじめな私米長邦雄永世棋聖が4月29日に書いた「名人戦契約 その3」に対する返答になっていると思います。

白紙撤回の意味が私には全く分らないのです。現時点での問題点はこの一点のみです。
 日本将棋連盟毎日新聞社とで交している契約書には、甲乙ともに何もしなければ3年間の自動延長が確定すると書いてあります。今年の3月31日までに申し入れをしないと、来年以降の3年契約が決定します。
 そこで3月28日に通知書を提出しました。それに書かれた文章、口頭での説明につきましては失礼な点をお詫びしました。
 白紙撤回が交渉の条件というのが毎日新聞社の主張です。これがどういう意味なのか、その真意を理事会は分らず悩んでおります。正会員である棋士達も悩んでいます。3年間は自動延長することをまず決定して、中味については交渉に応ずる。ということでしょうか。
 それとも3月28日付の文章が失礼すぎる。口頭での説明もこうとうむけいのもので許せないという意味なのでしょうか。もしそうであれば、どのようにも得心していただくまで非礼をお詫び致します。そのうえで交渉をしたいと考えております。
 白紙撤回が条件。これは、これからの約4年間は自動延長を決定してからという意味なのでしょうか。それとも来年4月1日以降はとりあえず自動延長は一時停止は分った。しかし失礼な切り出し方だから、もう一度文書を改め、口頭の説明もきちんと礼を失しないようにしなさい。という事なのでしょうか。
 将棋指しの頭では分らないのです。

これに対する日本将棋連盟理事会の態度がどうなっているのかはまだよくわかりません。「(毎日は)『撤回しても契約は自動更新されない』と主張しているそうだが、そうであれば文書で正式に申し込むべきだ。念書を交わすなどしなければこちらから撤回する気はない」という中原誠永世十段の発言がありましたが、これを受けて毎日新聞社が実際に文書で提出したため、上の発言時とは状況が変わりました。現在は「白紙撤回は一切ない。部分修正ならありうる」ということで、微妙に変化がうかがえるような気もします。

ただ、撤回しても自動更新にならないというのは以前の日本将棋連盟の立場とは全く異なっています。例えば、4月14日付の名人戦についての交渉経緯には「申し入れないと第66期から第68期まで自動的に契約が更新される。」と書かれています。このような両面の解釈を許す契約書の文面はどのようなものだろうかと思うのですが、それはそれとして、契約書に何と書いてあったとしても両者の合意があればそれを無視してことを進めることはできることが多そうですので、どうにかならないかと思います。

法的にはどうなるのでしょうね。撤回しても自動更新にはならないなら、撤回しなくても同じことになるのかどうか。そのあたりは契約がどう解釈されるか次第なのですが、第三者にはうかがい知れないところです。