名人戦契約問題についていろいろ(29)

棋士総会前の記事は昨日分に追加しました。

1.名人戦契約理事会案について
   賛成 149票、 反対34票、 無効1票、 棄権7票

これだけ見ると昨日の案が圧倒的多数で可決されたように見えますが、実際には理事会案は昨日のものとは異なるそうです。公式ページでその内容を記さないままだと、端的に言って虚偽の報告ということになるのではないかと思います。重大な事案についても考えが変わること自体はそういうこともありますが、それならそれで変わったと明示する必要があります。言うことをずるずると変えていく態度が不信を招いていると気付いてほしいと思います。

毎日新聞の記事によれば以下の通り。他紙でも同様の内容です。

理事会が25日に発表した案は、(1)毎日新聞社と単独案の交渉をする。折り合いのつかなかった場合は(2)共催案(毎日新聞社朝日新聞社、連盟の三者協議)。不調の場合は(3)朝日新聞社と交渉する−−という手順で交渉を進める、との内容だった。

だが、理事会はこの日、当初の案を事実上、修正。(1)毎日新聞社が単独主催を希望すれば、同社が提示した条件で契約するかどうかは、棋士の投票で決める。(2)毎日新聞社朝日新聞社との共催を希望すれば、その後の交渉は理事会に一任される−−との案を示し、採決をとった。

共催案については毎日新聞社が拒否すると思われるので、最大の焦点は毎日新聞社との単独の協議をどうするかでした。当初案は交渉内容やどうなったら折り合いが付かないと判断するのかについて言及がなく、今後の交渉を理事会に一任する内容でした。これが可決されれば事実上朝日新聞社への移籍が決まるものだったと私は理解しています。修正案では、毎日新聞社から条件提示を見た上で臨時総会を開き投票を行うとなっており、毎日新聞社との交渉について理事会が独自に動くことを制限する内容となっています。つまり、2日前に言われていたように最終決定を先送りにし、その間理事会は主導権を放棄することになったと理解できそうです。

この経緯については渡辺明ブログ:棋士総会。に率直に記載されています。「昨日までの案でしたらこんなに賛成多数で可決されることは有り得ませんが、もう一度会員の意見が反映されるということで可決となりました。」というのが実情のようです。

追記:やや遅れて朝日新聞からも記事が出ました。

今後どうなりそうかについてもう少し書きます。

今回可決された方針によれば、毎日新聞社名人戦順位戦について何らかの提案があったら、理事会はそれをそのまま持ち帰り臨時総会で棋士の投票を行うという手順になるようです*1。その投票が名人戦の行方を最終的に決めるものとなるのでしょう。可決なら毎日、否決なら朝日です。

結果がどうなるかは毎日新聞社の提案によります。契約金額をいくらにするかが最も重視されているようですが、それ以外にも王将戦をどうするかとか、順位戦のシステムは今のままでいいのかとかいろいろな要素が絡んでくることでしょう。

もう一つの注目点は協議開始がいつになるのかです。5月23日の朝日新聞の記事では「現在進行中の第64期名人戦七番勝負が終わり次第、毎日新聞社との協議に入るという」と書かれていたのですが、5月25日に連盟理事会は毎日新聞社に速やかな協議開始を要望する文書を送ったそうです。毎日新聞社が希望するように名人戦七番勝負終了後の協議開始の場合は、名人戦第5局で森内俊之名人が勝てば七番勝負が6月2日に終了するのですぐに協議開始となりますが、第7局までもつれると開始は7月になります。いずれにしても、期間中は棋士の間で説得工作などが行われるのでしょうね。

最後に、これまでの記事へのリンクを張っておきます。

*1:28日追記:27日付の読売新聞記事によれば、郵送や投票箱を設置しての投票により表決する可能性もあるそうです。