名人戦契約問題についていろいろ(30)

日本将棋連盟から「補足説明」の文書が出ました。25日に発表された理事会案は提出されなかったということは書いておいた方がいいのではないかと思います。事情を知らない人は、理事会案が一度否決されたか、総会の中で修正されたかしたと誤解しそうな気がします。普通は昨日の今日で予告なく案が変わるとは思いませんので。

それから、読売新聞の5月27日付朝刊3面にこの結果に関する大きな記事が出ています。

記事本文では情勢をまとめた文章となっています。「毎日支持に近い高段棋士」は今回の案を「毎日の案を棋士全員が投票で決めるのだから民主的だ」と評価するのに対して、別の棋士は一定額の協力金を毎日新聞社が支払わない場合には「それが無理なら共催案で妥協してもらうほかない」という話をする人もいたそうです。

記事右側には「名人戦問題の経緯」と題する時系列の表があります。日本将棋連盟毎日新聞社に「通知書」を発送した3月28日以前の出来事は記事によって微妙に違う部分があるように思います。この記事では3月3日に「朝日新聞側から名人戦移管の申し入れ書が将棋連盟に届く」、3月15日に「連盟理事会の8人全員一致で朝日移管の方針を固める」、3月17日に「朝日新聞社長名の正式な申し入れ書を連盟が受け取る」となっています。

右下には「30年先を読んだ改革を」と題する短文が掲載されています。「毎日に対してもっと配慮するべきだった」とした上で、次のように書いています。

連盟は財政が苦しいというが、現役棋士の数は毎年のように増え続け、現在156人。新聞社からの収入に頼るばかりでなく、幅広いスポンサーの獲得や、20年、30年先を見据えた改革案をきちんと示すべきだ。

以前から言われていたことではありますが、当の新聞紙上で書かれたことに大きな意味があります。記事中には作家の保坂和志氏のコメントがあり、その中でも「そもそもタイトル戦の契約金が高すぎる。(中略)自分で企画を立て人気回復する努力をするべきだ」とされていることを見ると、これが読売新聞社の意志であると受け止めるべきでしょう。日本将棋連盟では様々な施策を進めてきているということになっていますが、実際には胸を張って「改革」と言えるほどのものは出てきていないというメッセージです。もらえるものはもらっておこうという考えで今回の話が進んでいるように感じるのですが、そういう甘い話はなかなかないものです。

記事の左下には読売新聞社が5月18日付で全棋士を対象に行ったアンケート調査についての記載があります。アンケートに回答したのは196名中42名。うち23名が毎日と継続を支持したそうです。一方、朝日単独と共催はそれぞれ3名ずつだったということです。このアンケートの存在はこの記事で初めて知りました。

なお、29日発売の週刊現代6月10日号で「米長邦雄名人戦移籍失敗で責任転嫁」という記事が出るようです。例の特集の第4弾です。