「トリビアの泉」に大平武洋四段が登場
6月7日にフジテレビ系列で放送された「トリビアの泉」で大平武洋四段の例のエピソードが紹介されました。大平の挑戦!がおおにぎわいです。
はじめに、今回取り上げられた対局についてこのページで書いたエントリへリンクしておきます。
それから、雑多な知識など。
- 今回取り上げられたのは、2005年3月18日に行われた竜王戦第6組昇級者決定戦1回戦▲児玉孝一七段 対△大平武洋四段の対局。
- トーナメント表は下記。
- 竜王戦はトーナメント戦形式ですが、1敗しても昇級者決定戦(敗者復活戦のようなもの)を戦えます。大平四段はこのあと勝ち続けて、この年に第6組から5組への昇級を果たしました。
- 時間の記録@将棋パイナップルによれば、過去にあった消費時間ゼロでの勝局は以下の2つだけ。
- ちなみに、今回の対局の持ち時間は各5時間でした。午前10時対局開始で、両者が持ち時間を使い切ると(昼食・夕食休憩もあるため)終局は午後10時を過ぎます。
- なお、プロの対局で1手を1分未満で指した場合には消費時間はそのままとなります。消費時間ゼロといっても、秒単位で考える余裕はあったということです。
- 対局場所は関西将棋会館でした。これは対戦相手の児玉七段が関西所属だったため、関東の大平四段が大阪に遠征することになったためです。
個人的感想
次に私の感想を。
大平四段の行動はまさにファンの鑑、というよりも常識的には行き過ぎなわけですが、それがむしろ感動的な笑いを呼び起こす役割を果たしていて良質なトリビアに仕上がっていました。上ではいちいち記しませんでしたが、スタジオでも場面が変わるたびに爆笑が起こっていました。大平四段のウェブログに付いたコメントや様々なところのウェブログの記事では好意的なものが多く、全般的に好印象で受け止められたようです。誰しも何かしら好きなものを持っており、「好き」をそこまで徹底して行動に移せる大平四段をうらやましく思う気持ちがあるように感じました(同時に、あそこまでのめりこめない自分にほっとするという感想もあるかもしれません)。2005年3月に大平の挑戦!: 優先順位でZONEが将棋の対局よりも上と宣言しただけのことはある内容でした。今週のゲストはちょっと甘かった感じですが、それでも90へぇはトップクラスです。
大平四段はそれほど念願だった対面がかなったわけで、祝福したいと思います。おめでとうございました。
将棋よりもZONEが大切というのは将棋が好きな人にとって見ればかちんと来る一言になり得ますが、プロ棋士にとって重要である将棋よりも上に来るほど大事なんだという表現だと私は解釈することにしています。実際のところ、大平四段がZONEにかけているのと同じ熱意で将棋に取り組んでいる棋士は少ないと思います(比べる対象がおかしい気はしますけども)。
それから、コンサートと対局が重なったら対局を拒否すると宣言していた件についても同様に解釈します。もし本当にその理由で拒否したら懲戒処分は免れないでしょう。そうなったら私は悲しいですが、棋士を辞める覚悟があるとまで言っているのでご本人がそれで良いなら仕方ないというところでしょうか。端から見て愚行であっても、誰しも自由があるわけですから。ナレーターが最後に言っていたように「これからも頑張って下さい」。
でも、テレビで宣言したからといって、それを実行しなければならないということはないですよ。この場合は。
番組の概要
最後に、番組の概要を。文字で書いてもあまり伝わらないとは思いますが一応まとめてみました。
「ZONEの解散コンサートに間に合わせる為に 持ち時間を全く使わずに勝ったプロ棋士がいる。
」
- ビビる大木:「すごい!」
- 田中美里:「こればらしていいんですかー?」
- 八嶋智人:「これはねー……会長もいい顔をされています」
- タモリ:「これは見上げたもんだね」
- 高橋克美:「七之助さんもかなりの笑顔ですけども」
- 中村七之助:「下らないっすね(笑)」
この時点で、タモリ12へぇ、大木16へぇ、田中8へぇ、ベッキー13へぇ、七之助10へぇ。
八嶋:「こちらが確認のVTRです」
- 「将棋の持ち時間といえば、対局の際、最長で9時間にも及ぶ*1、次の一手を考える為に与えられた時間のことで、勝つ為にはほとんどの棋士がぎりぎりまで使い切るものであり……」「実際にプロの棋士の方に聞いてみた」
電話で答える大平武洋四段。
- 大平:「はい、確かに、ZONEの解散コンサートに間に合わせる為に、持ち時間を全く使わずに勝ったことがあります」
その解散コンサートは2005年3月18日午後6時30分開演。場所は埼玉県三郷市。
- 関西将棋会館の外観。
- 「その埼玉のコンサート会場から400キロ離れた大阪の関西将棋会館で」(大木:「え、大阪から行ったの!?」)
- 和室での対局風景。
- 「午前10時に竜王戦昇級者決定戦1回戦の対局が開始」
- おそらく週刊将棋の結果表。▲児玉△大平戦で大平四段の消費時間が0となっている。(対戦相手の児玉七段の消費時間は27分と記録されている*2。)
- 「そして持ち時間を全く使わず、10時52分に対局終了」(ベッキー?:「すごーい!」)
- バスで伊丹空港(30分)→午後1時の飛行機で羽田空港に午後2時過ぎに到着→電車を乗り継いでコンサート会場へ。(田中:「すごいなー」)
- コンサートの映像。
- 「そして、午後6時30分」
- (コンサートが始まって)ZONEの誰か*3「皆さん最後まで楽しんでってください!」(歓声の上がるコンサート会場)(大木:「あの中にいたんだな、うわー」)
- 「たしかにZONEの解散コンサートに間に合わせるために持ち時間を全く使わずに勝ったプロ棋士がいた」(田中?:「すごい」)
再び、電話で答える大平四段。
- Q:ZONEの解散コンサートの日に対局が決まった時どう思った?
- 大平:「(対局の)日を変えてほしいと思ったけど、まあえーと、決まってしまったことなんでしょうがないということで、(コンサートに)間に合うように最善の努力はしようと思っていたんですけど、まあ、途中から、もう、なんかちょっと、見たら(持ち時間の消費が)ゼロだったんで、あ、これはゼロのまま勝てば記録になるかなと思って、狙ってたんですけどね、途中からは」
- Q:ZONEの解散を知った時はどう思った?
- 大平:「ショックで、もう、2,3日家から出なかったんですよ。このまま(ZONEが)音楽活動辞めたら自分も棋士辞めちゃおうかなって感じで、(大木:「すごい影響力だな」)いつか棋士で有名になって対談とかできればいいなというように思ってたんで、それが無くなってしまうと、あまり棋士をやっている意味もないなと思って」(田中?:「すごいファンだったんだ」)
- Q:将棋とZONEどっちが大事?
- 大平:「将棋よりは、まあ、ZONEの方がまあ、大事だと思ってずっとやってます。ええ」
- 「せっかくなので」
- 大平四段の顔のアップから引き。カメラの前でインタビューに答える大平四段。
- 「大平四段には内緒でZONEとの対談をセッティングしてみた」(ベッキー?:「すごーい」)
- 笑顔で会釈しながら廊下を歩く舞衣子。(クレジット:「大平四段ZONEの中で特にファンだった 舞衣子さん(MARIA)」)
- 大平:「そうですね。中学校1年のときに」
- その瞬間後ろから近づいて肩をたたく舞衣子。
- おそるおそる振り返ってすぐに顔の向きを戻す大平四段。舞衣子:「こんにちは」
CMへ。字幕:「このあと ご本人登場」
CM明け。少し振り返り。
- 舞衣子:「こんにちは」
- 改めて大きく振り向く大平四段。絵に描いたような二度見。
- 大平:「あ、こんにち……(また顔の向きを戻す)」舞衣子:「こんにちは、舞衣子です」
- 同じ場面を別の角度からも繰り返し。
- 舞衣子:「対談したいって聞いたんですけど、来て、しまいました」
- ややうつむき加減で額の汗をぬぐってから。大平:「もう、今日死んでも悔いはないです」
- 舞衣子の横で「secret base〜君がくれたもの〜」を歌う大平四段。
- 「大平四段、これからも頑張って下さい」
スタジオ。
- ベッキー?:「すごーい」大木:「すげえな」
- 田中:「でも相手もちゃんと持ち時間を使わずにいてくれたからできたんですよね。これって」
- 八嶋:「向こうも早かったっていうのはあるかもしれませんね」
- 田中:「相手が9時間くらい使ってたら絶対恨まれてますよね(笑)」
- 大木:「負けた人がこれ知ったらがっかりですね」*4
補足トリビア
- 持ち時間を全く使わずに勝つのは、将棋界で史上3人目という大変珍しい記録。
- ちなみに、その後、大平四段は各地を回り、6回全ての解散コンサートを見て回った。
- 八嶋:「大平四段がZONEのファンになったきっかけについて申し上げますと、偶然テレビでZONEの特集を見た大平四段は、一生懸命歌って演奏している彼女たちの姿に釘付けとなったそうです。プロ棋士試験*5に何度も落ちていた大平四段は勇気づけられ、再度プロテストに挑もうと思い立ったのだそうです。『ZONEがいなかったら自分はプロ棋士になっていなかった。自分をプロにしてくれたのはZONEだ』という風におっしゃっていました。そしてちなみに、大平四段に、ZONEの中で一番ファンは誰かとうかがったところ、『強いてあげるなら、ベースの舞衣子』。現在は舞衣子の新しいバンド『MARIA』を応援しており、今年の夏は『MARIA』のコンサートで大忙しだそうで、『今度また同じようにコンサートと対局が重なるような事があったら、必ず対局を拒否します』と、力強くおっしゃっていました」
- 大木:「『必ず拒否』!」