福留孝介も参考にする羽生善治三冠の言葉

「気持ちよかった…。今年一番、気持ちいい当たりでした」。今季22号にして、ベストアーチ。初の逆転弾でもあった。スライダー2球のあとのストレート。待っていた。「どこかで1球くるだろうと思っていました」。その1球がこなかったら? 迷いは妨げとなる。『決断とリスクはワンセット』。天才棋士羽生善治の言葉だ。

ブラリと立ち寄った書店で、福留が手に取った文庫本がある。7冠を独占したこともある羽生の著書『決断力』だった。いわく「直感の7割は正しい」、「選ぶ情報と捨てる情報」、「才能とは継続する情熱である」…。野球と将棋。勝負の世界に生きる者として、大いに共感を得た。だが、すべてにおいて感化はされない。そこが福留という男だ。

「将棋は(指すまでに)考える時間があるじゃないですか。ボクたちとは違う。あそこに立って、そんな余裕はないですからね」

勝負は動く。だが、将棋より野球の方が早い。打席での1球に“長考”はない。静かにストレートを待ち、激しく仕留めた。そこにある決断をたたえたい。

たしかに、将棋で1秒未満での決断を求められることはないですね。ただ、日常生活でもそれはないので、どちらかというと野球の方が特殊なのだと思います。