女流棋士が日本将棋連盟から独立へ(続)

一昨日の女流棋士が日本将棋連盟から独立への続きです。

11月26日に女流棋士会から公式見解が出ました。

来る12月1日(金)、女流棋士会は臨時総会を開催いたします。その内容と結果につきましては、終了後に記者会見でお知らせし、女流棋士会公式ホームページにも掲載する予定です。

ということで、臨時総会で何が議題になるのかも全く触れられていません。前回紹介した報道とは少し異なるニュアンスを感じます。日本将棋連盟@将棋パイナップルではよみくま氏が次のような書き込みをしています。

143: 名前:よみくま投稿日:2006/11/26(日) 00:48

ちょっと公になるタイミングが早かったのでは?
独立がうまく行けばいいんですが、女流のスポンサーへの根回しが終わる前ですから、これから紆余曲折が予想されますね。

各方面への調整はまだ終わっていなかった模様です。とはいえ、第一報があった11月25日は女流棋士会の臨時総会がある12月1日まで1週間を切った時期でしたから、今年の春から準備が進んでいたという話を考えればやるべきことはほとんど終わっているのだろうと思いたいところです。

とはいえ、前回は時間の都合で書けませんでしたが、独立に不安要素があることは否めません。この点については書こうと思っていたことを「将棋ビジネス」考察ノート:女流棋士会独立で書かれてしまったのでそちらを読んでいただければと思います。

公益社団法人格を取得できることが理想ですが、具体的にどのように進めれば良いのか調べていないので、どの程度難しいのかよくわかりません。ただ、公益性についてはすでに活動の実績があるので比較的認められやすいのではないかと推測しています。現在公益法人制度について改革が進んでおり、関連法案はすでに今年5月に成立し2008年中に施行される予定となっています。これによってどのような影響があるのかも気になるところです。

独立のメリットとして待遇改善ということが言われていますが、前回強調したようにこの待遇は金銭面だけではないと私は考えています。実際のところ独立でスポンサーがすべて継続したとしても、短期的なことを考えるなら女流棋士の収入は横ばいなら良い方でしょう。それよりも重要なのは女流棋士に自己決定権を認めることだと思います。日本将棋連盟は今年の名人戦問題で契約金を上げるために全力で交渉にあたっていますが、女流棋戦をどうするかという点については女流棋士に決定権がなく、直接の利害関係にない人が同様の真剣さで交渉に臨めるかどうかは疑問に思います。そういった様々なことの積み重ねが現在に至るまであったのだろうなと想像しているところです。

現状では、将棋連盟の正会員ではないという大きな問題はありますが、それを除くと将棋界では女性の方が優遇されている面も結構あると思います。一番は稽古と言われる指導やイベントなどです。やはり、なんと言っても将棋ファンの大半は男性です。女性に教わりたいという方も、結構居るのではないかと思います。

もしかしたら別のことについての話なのかもしれませんが、この部分を読むと「優遇」ということばに違和感があります。指導やイベントの仕事が多いというのはつまり人気があることにほかなりませんが、人気のある人の収入が増えることは、将棋の強い人の対局料が多くなるのと同じで、「優遇」というのはしっくりきません。

大平武洋五段がそうだというわけではないと思いますが、将棋界では実力至上主義というのは根強くあるように思われます。実力のある人が上に行くべきなのは当然ですが、対局以外の仕事では実力は一つの要素でしかありません。もちろん実力は非常に重視される要素ですが、性別も含めそれ以外の要素を重視する人もいます。いずれにしても何が重視されるかは仕事を頼む側が決めることですので、そこを勘違いするとおかしなことになります。

一般論として組織が二つに分かれると様々な非効率が生じることが予想されます。本当は、日本将棋連盟に所属したままある種の自治権を認めるのが最善だと思います。それが実現できないとすると、独立は次善策かなと考えています。何にしても、重要なのはやはりやる気ですね。