「東の所司、西の森信」

日本経済新聞1月29日付朝刊に「将棋界、新たな名門台頭 面倒見良い師匠 弟子伸ばす」という見出しの記事が掲載されています。

将棋界には今も師弟制度が残る。将棋のプロを目指すには、日本将棋連盟棋士養成機関「奨励会」に入る必要があり、入会試験前にプロ棋士の弟子になって推薦してもらわないといけないからだ。昔も今も「名門」と呼ばれる一門があるが、ここ数年、台頭が著しいのが「東の所司、西の森信(もりのぶ)」。関東の所司門下と関西の森信雄六段(54)門下だ。

たしかにそうですね。所司和晴七段門下には渡辺明竜王をはじめ、松尾歩六段、宮田敦史五段(休場中ですが)がいますし、森信雄六段門下には、故村山聖九段をはじめ、山崎隆之七段、片上大輔五段、増田裕司五段、安用寺孝功五段、糸谷哲郎四段がいます。また、どちらも多数の奨励会員を弟子に抱えています。(所司七段が13名、森六段が14名)

どちらも対局面の成績は抜きん出たところはありませんが、次のような共通項があるそうです。

また、二人は穏やかな人柄で、弟子たちは「面倒見が良い」と口をそろえる。例えば、森は、病気のため入退院を繰り返し、命を削るようにして将棋に打ち込んだ村山のために下着まで洗ったという逸話を持つ。所司も「弟子に手を掛けるのが好きで、聞けば何でも教えてくれた」と渡辺は言う。

他の競技のコーチとは違って、将棋に直接関係することを教えるよりも、生活など人間として全般的なことの指導が大切になっているようですね。所司七段も森六段も将棋を教えるのが上手だろうと思いますが、それよりも人間として育てる意識があるということなのでしょう。

記事にもあるとおり、昔のような内弟子制は現在では廃れてしまい、このような師弟関係が主流になってきているという現状があります。囲碁でも内弟子は減っていますが完全になくなったわけではなく、韓国で内弟子制が有用とされていることから、内弟子をもっと取るようにすべきだという論調もあるようです。このあたりは違いを感じます。

柳時熏マイケル・レドモンド内弟子を育てた大枝雄介九段門下。大枝道場はなくなったが、よくしたもので、門下の大淵盛人九段が神奈川県相模湖町内弟子を多くとって奮闘している。「大淵さんのところはお子さんが多くて大変でしょう」と、近所のおばさんが野菜を置いていくとか。昨年入段を決めた日本棋院東京本院の3人すべてが大淵門下だから、いかに内弟子制度がすぐれているか分かる。

受け入れる側の負担を考えても、今の時代に内弟子はなかなか難しいだろうと思いますが、強化合宿のような一時的な共同生活でも効果があるかもしれません。