「女流棋士独立に日本将棋連盟理事会が『待った』」など

女流棋士関連もいろいろ動いているようです。

2月22日の女流棋士独立問題 準備委員会、連盟理事会の応酬など日本将棋連盟理事会の文書女流棋士独立に関連してが完結していない状態になっていることを書きましたが、それから2週間以上たった現在も新たな文書は公開されず、ただ放置されています。このように位置づけが不透明で中途半端な文書をそのままにしておくあたりに、日本将棋連盟理事会の広報のレベルを感じました。

米長邦雄永世棋聖の文章

公式文書はなかなか更新されませんが、米長邦雄永世棋聖はいつもどおり頻繁に日記などを更新しています。女流棋士に関連する部分をかいつまんで見てみます。

さわやか日記2月27日(火)17時16分42秒付では次のような記述がありました。

女流棋士の問題は皆さんご心配のことと思います。
もう少しで大胆な解決法を採ります。
私達もおとなしいだけじゃないんだよ。

「大胆な解決法」は次項で触れるものを指しているのかもしれません。今までもおとなしくなかったような気もしますが。

さわやか日記3月1日(木)11時41分2秒付では、2月28日に東京で行われた棋士会についての記述があります。4名の女流棋士が参加したそうで、その4名は「残留したいと希望した人」とのことです。(「さわやか日記」で書かれるのは原則として前日の出来事であるようす。以前はいつ起きたことなのか明記されていることが多かったのですが、いつからか省略されるようになり、誤解を招きやすくなりました。なお、一般的には米長永世棋聖の書く文書で書かれていないことを推定する際にはとりわけ慎重になるべきだという経験則を私は持っています。)

3月4日(日)17時38分49秒付では次のような記述が出てきます。

女流棋士で独立の準備を進めている委員会の代理人宛、日本将棋連盟代理人から通知文を出しました。
理事全員がj結束しての結論です。
私ひとりとは違いまっせ。

また、この日更新の米長邦雄の家では次のような文が登場しました。

女流棋士は職員とも、正会員の男子プロとも立場が異なります。これからは新法人に移籍して新天地で頑張る人。今まで通り社団法人日本将棋連盟に属して対局の権利を有し、普及活動にも協力してゆく人とに分かれるのでしょう。

「分かれるのでしょう」ということで、米長永世棋聖が当初示していた「一丸となって行動していただかないと困ります」という考えからは方針を転換したことが明確になりました。「対局の権利を有し」という部分が気になりますが、「権利」というのは日本将棋連盟が対局されるように努力する義務があるという程度の意味でしょうか。棋戦をどうするかは日本将棋連盟の一存では決められないはずですので。

ところで、上で女流棋士の「立場が異なります」と書いているところは、女流棋士新法人設立準備委員会ブログ 声明で書かれた「位置づけがはっきりしないあやふやな立場」と呼応する部分があり、そういう現状を問題と意識していないのかなと残念に思いました。

日本将棋連盟理事会が女流棋士に個別に文書送付

日本将棋連盟米長邦雄会長)に所属する女流棋士の独立をめぐり、同連盟理事会は9日、全女流棋士に対し残留か新組織移籍かを問う文書を送付したと発表した。理事会は女流棋士全員の賛成を条件に独立を容認していたが、一転して態度を硬化させたことで、新法人設立準備委員会では困惑が広がっている。

文書は、連盟に残留すれば棋戦の対局を保証する一方、新法人での対局の権利はまだ不透明などという見通しを示し、22日までに回答するよう求めている。中原誠連盟副会長は「独立に慎重、反対の女流棋士が増えており、残留希望者の権利を守る必要が出てきた」と説明する。

スポーツ報知や共同通信の記事によると、文書が郵送されたのは3月7日のことだそうです。日本将棋連盟に残留する女流棋士には従来の待遇を保証する一方で、新団体への協力は極めて限定的になるということのようですね。これはもう完全に、女流棋士の分裂を前提とした話になっていますね。ただ、残留するにしても従来から存在する問題は変わらないというよりもむしろ深刻になるわけで、そのあたりにどのように対処していくつもりなのかを明確にしないと女流棋士の対応が難しいのではないかと思います。ただ、棋戦の対局を保証するというのがどのくらいの期間の話なのかは不明です。仮に分裂という結果になったとして、現在結ばれている棋戦の契約が切れるまでは継続できる内容になっているとしても、その後不透明なのは日本将棋連盟も新団体も同じことのように思います。私としては、スポンサーの態度がはっきりするまでは日本将棋連盟と新団体で二重に登録するようにするのがまだしもではないかと思うのですが、これだけこじれると難しいのでしょうか。

ただ、現在も日本将棋連盟理事会は女流棋士の独立に反対とは明言していません。というよりも、記事の書き方を見ると独立そのものはすでに前提として認めているようです。しかし、残留する女流棋士の数を増やしたいとは思っている様子です。

いろいろと思うことはありますが、それにしても迷走もたいがいにしてほしいと感じました。どうしてこういうことになったのか全く理解できません。日本将棋連盟理事会のやり方は、女流棋士の分裂を誘うように行動しているとすれば一応のつじつまが合うのですが、そんなことをしても誰も得をしませんしどういうことなんでしょう。名人戦問題のときはまだしも契約金が増えて得できるかもという欲目があったのかという見方もできたのですが、今回はどう転んでもマイナスにしかならない方に進んでいるように見えます。

今回の文書について同連盟の中原誠副会長は「理事会としては女流の独立は全員一致を望んでいた。しかし準備委員会は弁護士を前面に立てて協議に当たったり、寄付、発起人、賛同人集めなどの準備に行き過ぎた面があり、女流の中に、反対、慎重派が増えたため、これ以上、放置できなくなった」と説明する。

これに対して、準備委員会側は「女流の圧倒的多数の賛成で決め、一生懸命、法人設立に向け準備作業を進めてきました。その中途で、連盟はこうした行動に出てきました。まるで踏み絵です。これじゃあ女流はいつまでたっても自分のことを自分で決められない。心外です」と怒りをあらわにした。

弁護士を立てるのが問題という理由は私はよくわかりません。準備に行きすぎた面があったというのは、寄付については時期が早かったのではという疑問が出ていましたが、発起人、賛同人については初めて出てきた話ではないかと思います。共同通信の記事によると、中井広恵女流六段のコメントでも「残留を望む棋士が増えてはきている」という話があるので、この点は見解の一致が一応はあるようです。準備委員会側の「まるで踏み絵です」というのは、むしろ踏み絵そのもののように思います。

ところで、女流独立の話を最初に記事にしたのも、今回の話を先んじて記事にしたのもスポーツ報知でした。女流名人位戦の主催社でもあり、関心が大きいということなのでしょうか。

共同通信の記事によると、3月16日に女流棋士会で話し合いを持つそうです。日本将棋連盟理事会が22日に回答期限を設定していることからこの日が山場になりそうな雰囲気です。女流棋士会日本将棋連盟棋士総会のように意志決定の機能を持っているならば、決議をして結果に従うという通常のプロセスをたどることになるのでしょうけども、そうでないならば単に話し合いだけで終わるのかもしれません。そのあたりは、参加者の認識次第ということになるのでしょうか。

もし、独立するかどうかを投票で決めるとすると、独立・残留を希望する女流棋士がそれぞれどの程度いるかが問題となります。共同通信の記事によると、「連盟理事会は相当数の女流棋士が連盟に残留を希望していると判断」したそうです。もし日本将棋連盟理事会が女流棋士全体の残留を望んでいるならば(というのも当初の報道からすればおかしな想定ですが)、具体的な数字を出さず、決議を促すこともしないといううのは残留を希望する女流棋士過半数に届かないということでしょう。しかし、理事会の意向を受けて、無視できない程度の数の女流棋士が残留希望に転じたと。

何度も書いているように、女流棋士という存在がなくなることは避けなければならないという認識は全体に共有されているものと思います(本当にそうかどうか最近不安に感じたりもするのですが)。女流棋士の現在の地位を考えると、現状以下になるというのはなくなってしまうのと同じようなものではないかと思っています。そうではなく、女流棋士の存在をどのようにして将棋界の中で生かしていくのかを考えなければならないはずなのですが、建設的な話がなかなかでてこないのは残念なことです。

ところで、この件に関してYahoo!ニュース - 将棋から2006年11月25日の女流棋士が日本将棋連盟から独立へおよび、2005年12月10日の女流棋界の抱える問題にリンクが張られました。ニュースがトップページに出ていた時間は比較的短かったようですが、総計で5000人以上の方がページをご覧になった模様です。こういったアクセス数は基本的に一過性のものですが、少しでも多くの方に見ていただけるのはうれしいことです。お読み下さっている皆様、どうもありがとうございます。

女流棋士新法人設立準備委員会の「要請書」

今日の更新はこれで終わりの予定だったのですが、女流棋士新法人設立準備委員会の新たな文書が発表されたので追加で更新します。

3月9日付で上記の文書が女流棋士新法人設立準備委員会から日本将棋連盟理事会に送付されたようです。今回は、送付元および送付先に弁護士名が入っているのが目を引きます。(木村晋介氏は日本将棋連盟側の顧問弁護士です。)

この要請書は、上記で触れた意思確認の文書に対して抗議の意を表明し、文書の撤回および話し合いを求める内容となっています。「書状は,女流棋士の「分裂」を前提として,更にそれを固定化させるもの」という指摘は否定のしようがないところと思われますが、その後に出てくる2点は法律用語があって私にはにわかには何とも言えません。

前後しますが、冒頭で「当方からの中止要請にもかかわらず」とあるのは新聞記事では書かれていませんでした。日本将棋連盟理事会の予告があったのかどうかはわかりませんが、要請を無視して強行するところにも改めて関係の険悪さが見えます。

話し合いは次の5者などが一堂に会する形で行うことが要請されています。

  1. 女流棋士
  2. 準備委員会(外部委員を含む)
  3. 貴連盟理事会
  4. 師匠
  5. 木村晋介先生

これは基本的に女流棋士新法人設立準備委員会より各界への寄付の要請に関する理事会の立場についてで書かれている日本将棋連盟理事会の「希望」に近いもので、日本将棋連盟理事会が断る理由はあまりないような気がするのですが、これまでの展開を見ていると何が起こるか予測はできそうにありません。