弱者への配慮あるウェブページ作り

YahooメールやHotmailなど、無料で利用できるメールサービスはいろいろありますが、以前からこれが無差別に大量発信するスパムメールの温床になっているとして批判されてきました。そのようなスパムメールを送信する手口の一つに、大量にアカウントを獲得しログイン・送信などの手順を自動化したソフトに行わせるというものがありますが、これを防止する手段として導入されたのが、画像による認証テストでした。記事中にある画像をご覧いただくとわかりますが、ぼやかしたり、ゆがませたりした文字を入力させるというテストです。

これは操作しているのが人間であることを証明するためのテストですが、そのような文字を読みとれない人間にとっては無理難題を突きつけられていることになります。つまり、視覚障害者の利用を制限していることになるわけですね。記事は、意図されたものではないにせよ、結果的に視覚障害者が排除されるのが問題になっていることを伝えています。

翻って考えると、将棋サイトはどうでしょうか。将棋倶楽部24のような動的な要素の高いサイトが対応できていないのは仕方ない面もありますが、単に文章で書ける情報を提供しているだけのサイトでも、視覚障害者への配慮を考えているようには見えないところが多いのが現状です。

将棋というのは、棋譜を読み上げれば原理的に頭の中で駒を並べることのできるゲームで、視覚障害者の大会が開かれているという話も聞いたことがあります。その意味で将棋は視覚障害者にも比較的優しい競技であり、将棋サイトにとって視覚障害者へ配慮してページを作ることは、意義のあることだと言えます。

視覚障害者への配慮というと難しいことのように聞こえますが、ウェブページを記述するhtmlにはもともとそのような配慮が盛り込まれているので、基本に忠実にページを作っていれば、本来はそれほど困ったことにはならないはずです。例えば、音声で読み上げるタイプのブラウザを使っている人にとっては、画像で表現された文字は対応が難しいように思えます。しかし、htmlでは画像と一緒にその代替テキストを記述することが必須とされており、読み上げの際にはその代替テキストが読まれることになります。しかしそのような規約を無視して代替テキストを記述していないと、困ったことになるわけですね。

例えば、神崎健二七段のホームページのメニューでは、観戦記情報が並んでいますが、そこで使われている画像には代替テキストが全く記述されていません。「竜王戦」という文字の画像があっても、代替テキストが指定されていなければまずいわけですね。htmlの書式では、次のように書けばいいのです。

<img src="images/title/ryuou.gif" alt="竜王戦">

どうせ視覚障害者なんて自分のページを見ていないんだから、そんな手間をかける必要はないと思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、上で書いたような配慮は視覚障害者のためだけではないのです。例えば、回線の細い人は画像が読み込まれるまで時間がかかります。文字が画像化されている場合、画像が読み込まれるまで何が書いてあるのか全くわからないのはストレスになりますが、代替テキストが適切に指定されていれば、読み込まれる前にどこに何があるのかわかり、快適にページを閲覧することができるようになります。そのほかにも、ネットに不慣れな人も弱者と言えますね。弱者への配慮は全ての人を快適にします。

こうしたことはウェブページを作り始める人にはなかなか情報が伝わらないのですが、プロとしてサイト製作を行っているような人であれば当然知っていることです。上で書いたのはそのごく一部にすぎず、様々なノウハウが研究されていますので、「ユーザビリティ」とか「アクセシビリティ」とかいったキーワードを手がかりに調べてみると面白いのではないかと思います。