「詰まない局面は引き分け」

上の話題のようにルールの重箱の隅をつついていくのは、フェアリーを考える者にとっては単に論理的な好奇心からだけではありません。普通の将棋の実戦で全く問題にならないような細かい事柄でも、フェアリーでは作品の死命を制する重要性を持つことはよくあります。一例を挙げれば、安南将棋では双方とも連続王手の千日手があり得ますが、この扱いはルール上明らかではありません。

チェスでそのようにルールを読み込んで従来と異なる解釈を生み出した例が、moovin' & groovin' というサイトで紹介されていました。現在はなくなっているため、曖昧な記憶を頼りに再現してみると次のようなものです。

最近のチェスのルール改正で次のような文言が導入されました。

If the position is such that neither player can possibly checkmate, the game is drawn.

どちらの対戦者からも相手をチェックメイトすることが不可能であるというような局面が生じたときは、引き分けとする。

しかし、チェスプロブレムでは詰みを目的とするものばかりではありません。例えば、Help Stalemate のようなものでは、問題図や途中局面で(互いに協力しても)「どちらの対戦者からも相手をチェックメイトする(詰ます)ことが不可能」となることが起こりえます。このルールを文字通り適用するならば、その場合はチェックメイトすることが不可能になった時点で引き分けとなり、作品が不成立になってしまうわけです。

ところがこれを逆手にとって、「どちらの対戦者からも相手をチェックメイトすることが不可能であるというような局面」を生じさせないように慎重に手順を進めるという制約を課す作品が現れました。チェックメイト可能かどうかというのは、局面によっては非常に微妙な問題であるため、普通の作品よりも難しいものになっています。

で、このような趣向に名前が付いていたのですが、その名前を忘れてしまいました。moovin' & groovin'が復活しないかなあ、ということです(爆)。

チェスをご存じない方にとっては訳のわからない話になってしまいました。将棋でこのような趣向が成り立たないかと考えてみたことがあるのですが、やはり将棋のルールは大まかなので難しそうですね。強いていえば、持将棋の宣言ルールが近いと言えるかもしれません。