将棋を指すと頭が悪くなる……はずはない

ゲーム脳」という言葉を耳にしたことのある方は多いと思います。これは日本大学文理学部教授の森昭雄氏による、2002年7月に出版された著書『ゲーム脳の恐怖』で生み出された言葉です。私はこの本を読んでいませんが、おおよその内容は下記の記事にあるもののようです。いい加減に要約すると、「ゲームをやってると頭が悪くなるよ」ということみたいですね。

この言葉は語感がわかりやすかったせいか一時期ブームのようになりましたが、出版直後から批判が投げかけられています。例えば、google:ゲーム脳を見ると説得力ある批判が多数見つかります。その中で現在一番手に表示されるのが斎藤環氏に聞く ゲーム脳の恐怖です。これは、『「斎藤環氏に聞く ゲーム脳の恐怖」のGoogleランクを上げよう』運動の成果なんでしょうね。他にもhttp://allabout.co.jp/game/gamenews/closeup/CU20030430A/index.htmでいろいろな記事を読むことができます。*1

私はこのこと自体はだいぶ前から知っていました。それでは、どうして一年半前のことをわざわざ書くのかというと、関連記事を読んでいて森氏が将棋を指していても「ゲーム脳」になるという趣旨の発言をしていることを知ったためです。*2

ゲーム脳の恐怖』P143には「将棋ゲーム」についてのみの記述だったが、『ゲーム批評』11月号のインタビューによると、テレビゲーム化されていない将棋でも、「考えることが必要なくなる」と、森氏は考えているらしい。

隔月刊誌『ゲーム批評』の2002年11月号を私は読んでいません*3。バックナンバーは注文すれば入手できるようですが、それだけのために購入するのもためらわれます。とはいえ、「将棋でゲーム脳」という主張自体は読むまでもなく否定できる類のものではないでしょうか。実際、上で引用したページのインタビューでも一笑に付されています。

もし「ゲーム脳」という概念を信じる人が増えると、将棋が有害であると誤解される恐れがあります。検索する限りではこの話を鵜呑みにしまっている記述はほとんどないので大丈夫とは思いますが、周りに信じてしまっている人がいたら教えてあげて下さい。お願いします。

そんなわけで真面目に反論するのもばかばかしい話なんですが、たしか将棋棋士の脳波を測定する研究というのがあったと思います。そのデータがあれば明確になるはずです。……と思って少し調べてみたんですが、どうもはっきりしたものがありません。ひょっとしたらこの辺の話も俗説にすぎないという可能性も捨て切れませんがとりあえずメモしておきます。

ボードウォーク・コミュニティー「ゲーム脳」とは何か?みたいに笑いに消化するのが本当は健全なんでしょうね。*4

*1:似通ったテーマでもっとまともな研究は高度情報流通関連基盤技術開発・実証事業の下段にある「テレビゲームが脳の活動や発達に及ぼす影響」なんだろうと思います。

*2:これもその筋では有名な話なんでしょうけど。

*3:http://www.chanbara.jp/books/gamebrain.html で引用されているのが、その一部ではないかと思います。

*4:6月24日追記:移転に伴い読めなくなっているようです。 2005年6月2日追記:復活していたのでリンクし直しました。