持ち時間制のあり方

持ち時間制限そのものが嫌いというのはやや極端な意見ですが、切れ負け将棋で互いに時計をたたき合うのはもはや将棋ではないというのはよく言われることでもあります。私も両方に近い気持ちはあります。将棋倶楽部24だと普通の対局が持時間15分秒読み60秒という規格ですが、これだと短く感じることがままあるんですよね。一度持時間2・3時間で本気の将棋を指してみたいなと思っています。

プロの将棋に目を転じると、将来的に2日制の対局がなくなる可能性はかなりあると思っています。現在でもコンピュータやインターネット経由の情報が対局結果を左右する危険性が指摘されていますが、将来将棋ソフトが進化して終盤の寄せ合いだけでもプロを凌ぐようなレベルに達すれば、1日目の夜中にパソコンを使って検討したり、他の誰かが対局中に見つけた手を変化を含めてメールで連絡したりといった行為が十分可能になります。そのようなことを許可するのか規制するのか。許可するとすれば、2日目はただ教えられたとおりに指すだけという展開になりかねませんし、規制するとすればどのように実効性を持った対策を打ち出すのかが問われることになります。対局者の寝室をずっと監視するわけにもいかないでしょう。

上で述べたことは将棋の本質とも持時間の価値とも無関係な話ですが、すでに問題となる兆候は見え始めていると思います。

もう一つ問題になってきそうなのは観戦者との兼ね合いです。現在、大きな対局はほとんどウェブ上で棋譜が実況中継されるのが慣例となっています。この方向性を進めていくと、ウェブ上での中継でしか見られない公式戦を作るという考え方は自然なものと言えます。もしそのような棋戦が誕生した場合、持ち時間を長くとるわけにはいかないでしょう。動かない盤面を何十分も見る人はあまりいないからです。

上のページで述べられているとおり、現代はスピードが重んじられる時代です。例えば、バレーボールでラリーポイント制が採用されたり、野球で作戦タイムが制限されたりなど、スポーツ競技は短時間化を目指す傾向が見られます。これはテレビ中継の利便を意識したものでしょう。将棋でも実況中継が普通のものになれば、同じ理由で短時間化が進められるかもしれません。そして、そのような風潮のアンチテーゼとして長時間にも人気が出るかということもあるかもしれませんね。

持時間などのルールは、対局をどのような形で見せるかによって変わっていくものと言えるでしょう。

最後に蛇足ですが、上のリンク先で触れられている砂時計を使った対局は、デジタル式のチェスクロックなら設定できるのではないかと思います。ザ・名人戦2ならどのモードに対応するのかよくわかりませんが、技術的には難しくないはずです。