日本将棋連盟を誰が運営するのか

日本将棋連盟の事業報告書を見ても明らかですが、日本将棋連盟が抱える最大のコストは「棋士の人件費」です。ここにメスを入れずに経営を立て直すというのは、今後も新聞社の契約金が無条件でアップしていくというあり得ない状況を想定しないと成り立ちません。

ものすごくドライな言い方をさせて頂ければ、日本将棋連盟の経営を立て直すには「リストラすべき棋士をどんどんリストラする。」その一方で「魅力的な人にはどんどんプロになってもらう。」という人材の流動化を行うことがまず必要です。加えて、勝負の世界の鉄則である「winner take all」(勝者総どり)を徹底して、人件費支出の濃淡をはっきりさせる必要があると考えています。

このような考え方は珍しいものではありませんが、将棋界に関して資料を提示した上ではっきりと意見を述べたのは初めてではないでしょうか。全文を読んでいただきたいと思います。

しかし、そのように前向きな再構築の提案が行われたとしても、現在の意思決定機構では物事がなかなか進まないかもしれません。各棋士が極めてミクロ的な視点から賛成反対の投票を行うと、自分の利益を損なう提案は通さないということになります。そして結果的に制度の刷新は行われず、気付いたときには手遅れになっている。そんな悲観的な見通しも考えられます。ぎりぎりになったら囲碁加藤正夫名誉王座のように人望と才覚を兼ね備えた人物が身を削って改革を進めるようになるのかもしれませんが、それでは犠牲も大きくなってしまいそうです。

今度の棋士総会では、将棋界の制度について様々な議論が交わされることになると思いますが、そこでは制度の維持可能性についても考える必要があるでしょう。