武者野勝巳六段が「訴訟に関するQ&A」を開設

いいかげんうんざりしているのですが、武者野勝巳六段が資料を拡充の続きです。

米長邦雄ホームページ更新

22日に更新された米長邦雄ホームページ米長邦雄永世棋聖が「裁判と勝ち負け」と題する文章を掲載しました。

法律のプロに教えを乞う。「米長先生。全ては証拠と法解釈で決まります。時効になる日までは残しておくのが仕事です。これをご覧下さい」

驚きました。平成13年春のやりとりが全てファイルされている。予備に違う場所にも保存されているのだそうです。平成12年3月17日から始まり、平成13年4月3日付けのものまで20通くらいの文書のやりとりが残されています。

当時は田中寅彦九段とM六段は一緒に仕事をしていて、将棋ファンの愛棋家にお世話になっていた時期なのですね。裁判になりますと、その親会社に居た人達も証言することになるでしょうから、大変賑やかなことになると思います。僅か4年前のことですが、その当時の全てが再現される。そのうえでの黒白となります。

また、同日のさわやか日記には次のような記述があります。

勝つのは簡単でも、勝ち方の難しさに頭を悩ましています。

負けるが勝ち。名言ですが今回だけは本氣を出すよりないのかもと思います。

米長永世棋聖の文章は文字通り解釈すると判断を誤ることがあるので注意が必要です。この文章も「勝つ」というのは必ずしも裁判で勝訴することを指していないかもしれません。

週刊朝日の記事

昨日発売の週刊朝日6月3日号に「手詰まりか、逆王手か 米長永世棋聖が提訴された「盗作疑惑」の仰天中身」という見出しの記事が掲載されています。見た限りでは、新しい情報はありませんでした。

マリオ武者野のホームページ更新

一方、武者野勝巳六段は、一問一答のページを本日開設しました。こんなにいろいろしゃべらなくても、法廷の場できちんと発言することを優先しなくて大丈夫なのかと、おせっかいな感情も湧いてきます。

理事選との関連について、武者野勝巳六段は次のように述べています。

武者野

その「選挙妨害うんぬん」というのは、私が出席していない棋士会で、米長氏が事件を報じる週刊誌発売以前に突然発言された内容で、公の場において行われた私の名誉への重大な毀損であると考えています。

私が米長氏を「理事にはふさわしくない人」と考えていることは否定しませんが、今回の選挙には弟弟子の森下卓九段が立候補している。彼は米長氏と立場が近いので私の立場は複雑。よって今回の選挙は静観を決め込んでいます。

こばやし

ということは、この時期の提訴はまったく偶然だと?

武者野

米長氏のHPに今日初めて『時効』という文字が躍っていましたね。『時効』というのが大きなキーポイントです。

できるなら(社)日本将棋連盟棋士同士の訴訟は避けたかったので、交渉しようと粘り強く人を介してましたが、まったく取り合う姿勢がありませんでした。

著作権侵害の時効は3年だそうです。2002年3月7日から3ヶ月間に短期集中販売されていたとすると、時効は2005年6月7日に成立。実際はもう少し長い間販売されていたのでしょうが、とにかく時効を迎えると訴えの根拠自体が消滅してしまう。(後略)

よくここまで述べることを弁護士の人が許したなあというのが正直な感想です*1。普通のゲームソフトは発売直後の売り上げが一番多いのですから、そのように考えるのならもっと早く提訴すべきだったのではないかと思います。それから、5月6日発売の「週刊現代」の記事中での次の発言とどう整合性を取るのかも問題になってきそうです。

5月26日には、日本将棋連盟の会長が改選されます。米長さんは、会長の座を狙っています。もし、米長さんが会長になれば、私の立場など、簡単に吹き飛ばされてしまうでしょう。それはそれで、仕方ありません。でも、黙って泣き寝入りするより、せめて一矢を報いたいのです

そして、ソフトの制作者については次のように述べています。

講座や問題集は(株)棋泉が作成したもので、それを証明する資料はいくらでもありますし、米長氏も承知でしょうから、この部分は争点にはならないのでは。

*2私は「それを証明する資料」も重要になってくるだろうと思います。争点にならないのなら確かに不要ですが。

さらに、武者野六段は、「米長邦雄の将棋セミナー21」から「米長氏関連のパーツを除いた新バージョン」を制作していることを明らかにしています。これを発売するために、権利関係の明確化が必要だったという事情もあるようです。

そして、「第1回公判が6月21日午後1時半より、東京地裁にてと決まった」のだそうです。

最後に一つだけ、次の部分に気になった記述がありました。

それでさえもデジタル化権(著作隣接権)は別のものですし、ソフト全般にわたる 著作権の全てが米長氏にのみあるという考え方は無理がありすぎます。

「デジタル化権」と称するものは著作隣接権ではなく、複製権もしくは翻案権の一部ではないでしょうか。

著作権解説など

それから、前回のエントリーで紹介した言いたい放題で続きが書かれています。

将棋サイトで御紹介いただいたようで、たくさんの方の訪問をいただいています。しかし、どれだけ書いてあることをご理解いただけのかと思うと少々不安。自分でも整理しきれていないものが、どこまで伝わっているのか…。多少の知識がある方には(納得するかどうかは別として)伝わることは伝わると思うのですが、著作権自体にくわしくない人にはどうなのか…。」とのお気持ちはたしかにそうですね。私もちゃんとわかっているわけではありませんが、少なくとも著作権について話題にするときに著作権法の一定の知識なしに議論するのは不毛です。

関心があるけれども何を読んでいいかわからないという方には、手軽に参照できるものとして、文化庁著作権〜新たな文化のパスワード〜にある「著作権テキスト」をおすすめしておきます。

*1:この件とは関係ありませんが、森下卓九段は米長永世棋聖に近い立場だったのですね。知りませんでした。

*2:「(株)棋泉」は2002年当時は「株式会社駒音コーポレーション」でした。