名人戦契約問題についていろいろ(25)

日本将棋連盟が3月28日付で毎日新聞社に送付した「通知書」に関連して、日本将棋連盟は5月19日付で毎日新聞社に「補充説明書」を送付し謝罪の意を表したそうです。それを受けて毎日新聞社は協議に応じる姿勢を示しました。これまで通知書を撤回するかどうかで対立が続いてきましたが、これをもって一応の決着を見たということになるようです。

連盟理事会としては通知書を撤回していないという立場で、今回の補充説明書は19日の記事でいうところの「部分修正」にすぎないのかもしれませんが、毎日新聞社は撤回したと一方的にみなすことにしたと。いずれにしてもそれによって協議が開始されるので、どちらにとっても許容範囲であるということだと思います。

連盟の補充説明書は「通知書にはストレートに『第66期以降の契約に関しては、解消させていただきたく、ご通知申し上げます』とあり、何の事前相談もないままの、一方的な契約破棄の申し入れと誤解されたとしても無理はなかったと思います」と記したうえで、「貴社との協議なしに、一方的に契約を破棄する意図は全くなく、このような誤解を招く文書を発出し、ご迷惑をおかけしたことは、深く反省し、おわびします」と謝罪。「すみやかに、貴社と誠意ある協議に臨み、双方が納得のいく話し合いをしたいと考えています」としている。

本社の回答書は「この『補充説明書』をもって、3月28日付『通知書』での一方的な契約破棄の申し入れは撤回されたものと判断します。第66期以降につき誠意ある協議に臨むことは了承します」と話し合いに応じることを表明。「協議の開始は、第64期の七番勝負が進行中であり、対局者が落ち着いた環境の中で対局できるよう最大限の配慮をするためにも、七番勝負が終了してからにしたいと考えます」と提案している。

今後は協議がどのように行われるかに焦点が移ります。毎日新聞社の意向は、名人戦七番勝負が終了してからの話し合い開始で、最短で6月3日(第5局終了後)、最長で7月1日(第7局終了後)からということになります。棋士総会は5月26日のため、この場合は名人戦問題はこの日には決着しない公算が大きくなります。毎日新聞の19日付の記事で「一方で、『話し合う時間が足りなければ、26日には決着させず、日を改めて臨時総会を開く可能性もある』との見通しを示した。」とあったのは、こういうことを示唆していたのかもしれません。

そのような報道がある前の話になりますが、本日の日本経済新聞朝刊でこの問題に関する囲み記事が出ました。昨日までの状況を手短にまとめた上で、次のように書いています。この部分は特に重要な指摘だと考えます。

棋士の間では「毎日か、朝日か」だけでなく「理事会を信任するか否か」という問題も盛んに議論されている。総会に諮る議案がどんな内容になるにせよ、理事会が信を問われることになる。その結果によって、棋士たちもまた将棋ファンから信を問われるはずだ。

次に、週刊誌でもこの問題が扱われています。一つは5月22日発売の読売ウイークリー6月4日号。「泥沼の名人戦問題『朝毎共催案』の奸計」という見出しです。共催案に毎日新聞社が反対したことで強硬姿勢と見られ、棋士の支持を失い現在は朝日と毎日で五分五分の形勢になっているという、それが理事会側の「奸計」だったという趣旨ですが、今日になって少し状況が変わったのでタイミングが悪かったかなという気がします。

もう一つは週刊現代6月3日号で、これは桐谷広人七段が告発するという形での米長邦雄永世棋聖に関する批判記事の第3弾という位置づけです。これに対しては、5月21日に更新された米長邦雄の家の中で次のように書かれています。

将棋の高段者が講談社野間佐和子社長を訴えですか。

週刊誌等の悪質な記事は、編集長を訴えるのが定跡です。近頃は訴えた方が勝訴していますから、訴えれば裁判費用の何分の一かは取り返せるかも。

週刊G誌の度重なる私めの記事は、取材要請が全く無いもので、私も初めてのケースです。2週分を見てから社長室長へクレームを出しました。第三回目からは要請を出してきましたが、加藤晴之編集長は社長に叱られたことと思います。

報道の自由は守られるべきと思いますが、報道の勝手は困ります。

米長邦雄永世棋聖自身が講談社(内の誰か)を相手取って訴訟を起こすとは書かれていないと私は判断します。

上の文章が「名人戦契約 その10」という見出しの中に書かれているのでここで取り上げましたが、週刊現代の記事自体は名人戦問題とはほとんど関係なく、米長永世棋聖の過去の言動についていろいろ書かれているだけです(「だけ」ということもないかもしれませんが)。先日の棋士会の中で名人戦共催案について批判した棋士(記事中には実名で出ていますが一応ここでは書かないでおきます)を、米長永世棋聖が退席させたということが書かれているのが直接関係あるくらいでしょうか。

今回の米長永世棋聖の更新分の中でも名人戦の件に直接関係するのは「名人戦契約については、理事会と朝日新聞社が事前に契約等は全くしていない。これは「その7」を良く読んで下さい。」という部分だけです。契約「等」に何が含まれるかが問題になってきそうですが。