名人戦契約問題についていろいろ(54)

文藝春秋の記事

10月10日に発売された文藝春秋11月号のコラム「丸の内コンフィデンシャル」で名人戦問題が取り上げられました。基本的に新聞業界話としての視点で、朝日新聞社が共催に応じたのは朝日の財務部門が負担の大幅増加に難色を示したことが一因のようだとか、毎日新聞社の強硬姿勢の背景には日本新聞協会会長人事で毎日が朝日に貸しを作ったのにそれを無視されたと感じたことがあるのではないかとか、これまであまり聞かなかった話が書いてありましたが、情報源が記載されていないので信頼度はよくわかりません。

なお、この号には佐藤康光棋聖のゲン担ぎに関する記事もありますので、ファンの方はお見逃しなく。

サンデー毎日の連載に関する話

取り上げる機会がありませんでしたが、以前コメントで情報をいただいてそのままになっていた話を紹介します。

月刊碁ワールド6月号のコラム「囲碁と映画の文化論」の中でこの話題が取り上げられています。筆者の松島利行氏は元毎日新聞編集委員です。松島氏が30歳をすぎたばかりの頃(1971年かその翌年の春のことだそうです)、夜に飲んでいると大山康晴名人からことづてがあり、自宅へ電話してくれと言われたそうです。

その数ヶ月前、木村義雄名人が老齢を理由に何十年も続けてきた将棋コラムの担当をおりたいと申し出られ、牧野喜久男編集長から囲碁将棋欄の次の執筆者を考えてくれと命じられた。同じページを分け合って長谷川章七段による手筋解説と詰碁が連載されていた。将棋界については何も知らなかったが、たまたま持将棋千日手を加えて十番勝負の末に中原誠王将が防衛というニュースを覚えていて、とくに相談する相手もいなかったから「毎日新聞の棋戦の本因坊と王将が年齢も若い同世代ですかし、……石田芳夫中原誠で」と編集長にすぐ伝えた。「それじゃあ、君が頼んでくれ」と言われ、二人に連載をお願いしたのであるが、これが大山名人の怒りを買うことになった。

(中略) 嘱託である大山さんの知らないところで自社発行の週刊誌の将棋欄執筆者が交代したら、憤慨するのは当然であろう。

というようなことで、「明日は社長に会いに行く。私が毎日新聞を辞めるか、君が辞めるか」などと、そんなことを言われたそうです。その次に書かれた別のエピソードを含めて全体に趣旨がはっきりしない部分があるのですが、サンデー毎日の長期連載の意味合いが感じられる話ではあります。

このコラムが書かれた数ヶ月後に、中原誠永世十段の連載が打ちきりになったわけです。そう考えるといろいろな巡り合わせというのはあるのだなと感じられます。