将棋盤を利用したパズル

あまり将棋に関係ないような気もしますが、気にせずに。

将棋盤(9×9のマス目を持つ盤)を使って二人が陣取りゲームをする。 自分の番になったとき、 空いているマス目(自分の陣地でも相手の陣地でもないマス目)の中からいくつか選んで「自分の陣地」にすることができる。 一度に自分の陣地にできるのは、 「1個」か「隣り合った2個」のいずれかである。 隣り合った2個は縦の2個でも横の2個でもよい。 パスはできない。 自分の番になったとき空いているマス目がひとつもなかったら負け。

こういう話は将棋よりも囲碁を打つ方がすぐにぴんと来るかもしれません。要するに「マネ碁」ですね。

「マネ碁」というのは、相手が打った地点の点対称な位置に打つ作戦です。黒番(先手番)でやる場合には、初手に天元(盤の中央)に打って、その次の手から「マネ」に入るというわけです(囲碁の盤は一辺が奇数の正方形ですので中央が存在します)。上のパズルではこの作戦がそのまま通用しますね。曾呂利新左衛門という人が豊臣秀吉にこのように入れ知恵したという言い伝えがあることから「太閤碁」と呼ばれることもあります。

現在のルールでは黒番に「コミ」というハンデがあるため、プロで黒がマネ碁を打つ作戦は見られません。しかし、ハンデがなければ黒は必ず持碁(引き分け)に持ち込めるのかというとそうでもありません。なぜかというと、囲碁は上のパズルとは違って石を取ることができるからです。どうしてそうなのかは、考えてみるとわかると思います。「ヒカルの碁」で出てきたのでご存じの方も多いでしょう。

このマネ碁に関しては、碁ワールド6月号で柳時熏九段が「マネ碁の科学」と題して充実した面白い記事を書いています。

プロでもマネ碁の実戦例はあるのですが、これは単純に真似するというのではなく、相手に追従していって相手がぬるい手を打ったらそこで変化して別の手を選ぼうという作戦です。上述の通り、現在ではマネ碁は白番の作戦となっています。基本的には、先番の有利さは局面がそのまま進めば進むほどはっきりしてくると考えられますが、囲碁は決着がつくまでの手数が長くかかるので50手やそこらでは形勢が傾くことはないということなのでしょう。

この作戦に対して黒の対抗策で有力とされるのは2つあるそうです。一つは、黒が天元に打つこと。こうすれば確実に真似を阻止できますが、天元に打つこと自体がぬるい手であるなら逆手に取られるだけですので、天元に打つ手が好手になるような局面にいかにして持ち込むかが課題となります。もう一つは、点対称にシチョウを作って中央でぶつける方法です。この方法は『シチョウの世界』に解説があります。(「シチョウ」とは何かについては囲碁の入門書に必ず出てくるのでここでは解説しません。)

さて、元のパズルに戻ると、この作戦は盤の形状が対称形であることに依存していました。もし、盤のどこかが欠けていたり出っ張っていたりしたらどうなるでしょうか。考えてみましたが、一般的な指針は思い浮かびませんでした。このゲームの1次元版に近い「ニム」では一般的な解法が知られていますが(『石とりゲ−ムの数理』という本もあります)、2次元になると難しいのかもしれません。