女流棋士会ファンクラブ「MINERVA」来年2月に会員募集開始

ファンの皆様と女流棋士会を結ぶ懸け橋となる女流棋士会ファンクラブ「MINERVA」(ミネルヴァ)が誕生します。

より身近な女流棋士を感じてもらうため、会報誌をお届けするとともに、将棋で感じた疑問を女流棋士が答えてくれる棋譜診断、各種イベントなどを開催いたします。そして注目はあなたがスポンサーがキャッチフレーズのファンクラブカップの開催です。ぜひ一緒に応援しませんか?

ということで、2007年2月25日に行われる女流棋士との親睦将棋会2007から、入会受付を開始するとのことです。個人会員は入会金1000円、年会費5000円。会員には様々な特典があります。(ただし「内容については変更する場合がありますのでご了承ください」だそうです。)

ミネルヴァとはローマ神話に出てくる女神のことですが、ミネルヴァ書房など様々な企業の商標としても使われているので、グッズ展開などするときには法的にきちんとしておく必要がありそうです。

ファンクラブのあり方として、会員に会費分のサービスを提供するという位置づけなのか、それとも寄付金に近い位置づけなのかが気になります。これからの方向性に関わる部分ですので、早い時期に明確にしてほいた方がいいのではないかと思います。もちろん両方というのもありですが。従来なかった試みだけにうまくいってほしいですね。これまではお金の流れがファン→新聞社→棋士という形だったのが、ファン→棋士と直接届くわかりやすい形になると、ファンの声も届きやすい態勢になるのではないかと期待します。

ところで、私は気付いていなかったのですが*1、11月30日付で古河彩子女流二段が次のような文章を公開していました。

11月25日(土)のスポーツ報知「女流棋士会来春にも独立」はとても驚きました。確かに臨時総会の召集が、12月1日に予定されていました。電話連絡はあったものの、手元には議題「女流棋士会の今後について」という12文字だけでした。

詳しい事は何も知らないです。。女流棋士への説明会は29日と30日に案内され、両日出席しました。私の手元には1枚の資料もなく、いくつかの資料の閲覧を希望しましたが、許されませんでした。今日は、「質問ありますか?」から始まりました。 明日は臨時総会ですが、私も含めて殆どの女流棋士が詳しいことを知りません。全てを知っているのは、多分10人足らずです。

そのことを書き残して、明日の女流棋士臨時総会に臨みます。

(2007.11.30.23:35)

この後、12月5日に古河女流二段が公開したページを含めて、関連するリンクを列挙しておきます。以前のリンクは12月1日の女流棋士が新法人設立へ 臨時総会で決議をご覧下さい。(なお、12月1日にお伝えした票数に誤りがありました。申し訳ありません。三番地さんご指摘ありがとうございました。)

何となく、女流棋士の間でもこの「独立」に関して温度差があるように感じていたのですが、米長邦雄永世棋聖さわやか日記12月3日(日)17時18分50秒付の記述を見て、そういう気持ちもわかるような気がしました。

女流棋士独立というので、会長、副会長、専務、常務と待機していました。
6時近くに申入書。
個人的には意見はありますが、理事としては完全中立です。
心配は山程ありますが、ひとつひとつを彼女達がクリアしてくれることを祈るのみです。
それにはリーダー達の週八日間勤務くらいの熱意でしょうか。大丈夫そうで心強い。

この書き方は、日経の記事にある「会見した藤森奈津子女流棋士会長によると、米長邦雄連盟会長は『独立が決まったら全面的に応援する』と話したという」という記述と不整合に見えて心配です。女流棋士が新たな組織を立ち上げるにあたって、軌道に乗るまでは日本将棋連盟が全面的に支援することが前提となっていると思います。祈るだけで何もしてしないのであれば、女流棋士だけでなく将棋界全体にとって不幸なことになるのではないかと不安になります。東奥日報の記事には次のようにあります。はしごをはずすようなことはしないでほしいと願います。

四月十四日、女流棋士に緊急招集がかかった。臨時総会の開催だった。米長会長のひと言で、穏やかに進んだ総会に緊張感が走った。「将来のため女流棋士会の自立が必要な時がきた」。公の場で初めて独立を促され、女流棋士たちは「大変なことになった」と表情を変えた。

米長発言の裏には、将棋連盟にとって女流棋士の存在が重荷になってきた現実があった。現役の女流棋士は50人。男性に比べ地方在住者が多く、交通費など諸経費はかさむ。対局日の設定が難しく、対局の記録要員確保など人件費もばかにならない。

一方で羽生善治3冠が7冠に輝いた九六年に比べ3割減といわれるほど将棋人口は減り、連盟発行の月刊誌の減少は続く。連盟は年間1億円ともささやかれた赤字体質脱却が急務だった。米長執行部は財政改革の一環として、名人戦朝日新聞主催への移行提案などとともに女流棋士の“親離れ”を強いた。

さて、上で引用した文章を書いた古河女流二段は12月5日に2006.12.1の臨時総会を終えてを公開し、その中で次のように書いています。

今回の決議、私は「棄権」をしました。このような重大な案件を正式な文書が配られて5時間足 らずで簡単に賛成はできませんでした。しかし、女流棋士界の将来を考えて大切な時間を使って 勉強し準備して下さった制度委員会の皆様のことを思うと、5時間足らずで安易に否定もできま せんでした。賛成44・反対1・棄権8で可決されたことは、重要なことと受け止めています。

このように、独立について詳しく知らされていなかった女流棋士が多数いたことについて、中井広恵女流六段は広恵の日記2006-12-03 00:02:46付で質問に答えて次のように書いています。

1)たしかに、制度委員会で進めてまいりましたが、これは春の総会で自立に向けて話合うということで、女流棋士の賛成多数により、制度委員に一任されています。 勝手にということではありませんので、ご安心下さい。確かに、一部反対意見の方や、慎重派の方も居ましたが、決議の結果が反対1名というのを見ても、女流棋士の総意と受け取っていただいて、良いのではないでしょうか。

2)これについても、情報を隠していたということではなく、 噂が先行しないようにということで、臨時総会まで待っていただきました。 当日内容を見ていただいて、ほとんどの女流棋士の方にご理解いただき、また労いの言葉を多く掛けてもらい、やってきたことが報われた思いでしたが、一部の方に不信感を 与えてしまったことは、申しわけなく思っています。

また、大庭美夏女流2級は次のように書いています。

まずは案をまとめ上げることが最重要で、途中の過程で一部が伝わって誤解や混乱を招かないように、臨時総会までその内容は女流棋士にも公表されませんでした。報道機関にも、臨時総会が終わるまではこの件に関する取材は遠慮したいこと、報道もできれば控えていただきたいことをお願いしてきました。

11月25日に報知新聞に記事が掲載され、その内容は役員会や制度委員会が関知したものではありませんでしたが、自分たちに何も知らされていないのに「来春独立」という記事が出て、女流棋士の中に相当な動揺と不信感が広がってしまいました。

ですが、そのあたりの事情も会議の場で説明してみんなに理解してもらい、きちんと報告の中身を見て論議ができ、結果として議案が通ったことは、本当によかったと思います。

スポーツ報知の第一報は完全にスクープ的な記事だったのですね。将棋界の場合、新聞社は報道機関であると同時にスポンサーでもあるという二面性がありますので、余計に対応が難しくなりがちです。致命的にならなかったのは良かったと思います。

なお、2月11日に植村真理三段・林まゆみ二段 女流棋士会脱会でお伝えした2名については、「これは連盟との協議次第ですが、現在女流棋士会のメンバーではない2人にも、条件を示して新団体には加わってもらえるようはたらきかけていく予定です」とのことです。

現在どこまで準備が進んでいるのかが最も気になるところですが、東奥日報の記事には次のように書かれています。

対応は早かった。六月の定例総会で自立に向け、制度委員会を設置した。新団体の社団法人化、新たなスポンサーの獲得、賃金体系の見直し。将棋界に精通しているスタッフを複数加え、既に事務所も確保した。新しい棋戦のめども立った。

「新団体の社団法人化、新たなスポンサーの獲得、賃金体系の見直し」はめどが立ったということなのか、それともこれからの課題として書かれているのか、これだけではよくわからないのですが、「新しい棋戦のめども立った」というのは喜ばしいですね。女流棋士は男性棋士に比べて現在の対局が少ない分、余力があると考えられますので、付加価値をさらに高めていってほしいと思います。
最後に、女流棋戦の金額について記述があったのでメモしておきます。

現在、女流棋戦はタイトル戦が4、公式戦が2。この6棋戦合計で契約金は推定7000万円にも満たないといわれる。連盟が事務経費などを取るため、女流棋士に渡るのは5000万円(推定)以下。賞金や対局料を含めて、である。現役は50人だから平均年収100万円。これに満たない女流棋士も多い。後は将棋祭のゲストなどのアルバイトしかない。女流タイトルは最高の優勝賞金でさえ、男性の最高額、竜王戦の3200万円の4%足らずだ。

女流タイトルで賞金額が最高なのはアルゼ杯女流名人位戦だと思いますが、「3200万円の4%足らず」というと100万円を超える程度ですか。囲碁の女流棋戦の優勝賞金と比べてもずいぶん低額です。もしかしたら算出方法が異なるのかもしれませんけれども、もし囲碁と比べて大幅に低くなっているとしたら、まだまだ上昇の余地があるということになりそうです。

12月20日追記

女流棋士新法人設立準備委員会ブログ 女流棋士新法人設立のための発起人一覧より、発起人一覧をメモしておきます。

*1:アンテナでチェックしていますが、更新が途絶えているとアンテナの巡回頻度が数日に一度以下になってしまうため、タイミングによっては更新されても何日も気付かないことがあります。