女流棋士独立に関連していろいろ

いろいろと動きなどがあります。

中井広恵女流六段のインタビュー

2月5日発売の週刊エコノミスト2月13日号で中井広恵女流六段のインタビュー記事が掲載されます。呼んでみようと思います。

日本経済新聞の記事

1月29日の日本経済新聞夕刊に「女流棋士 自活の道探る」という見出しの記事が出ています。

背景にあるのは待遇面の男女差。一般棋戦と女流棋戦とでは契約金額がケタ違いで、当然、男性棋士女流棋士の収入も段違いだ。加えて、女流棋士は連盟の正会員ではないため、理事選の投票権や、最高意思決定機関である棋士総会での発言権がない。厚生年金にも加入できない。イベントやテレビ番組への出演など普及面で大きく貢献しているにもかかわらず、不安定な立場に置かれている。「対局料が低いのは実力の差だから仕方ないが、女流棋士に関する制度や待遇面について、関与できないことがつらかった」と中井女流六段は言う。

対局料の差は実力差以上の開きがあると私は考えていますが、それ以上に「関与できないこと」が問題になっているというのは以前からお伝えしてきたとおりです。女流が独立すれば、収入はともかくとして関与については十分になります。

とはいえ、独立に向けての課題が山積みであるという指摘は記事の中でもなされています。

ただ、事務局の体制づくりや対局場の確保など課題はまだまだ山積みだ。独立に不安を感じる女流棋士もいて、すべての女流棋士の賛同が得られるかどうかも分からない。米長邦雄連盟会長は「独立後は連盟はないものと思って活動してほしい」と注文をつけるのを忘れない。

米長永世棋聖の発言に関してはこのあとまとめて書きますが、独立するにせよしないにせよ、女流棋士の抱える不安をできるだけ少なくするような対策を日本将棋連盟でも考えてほしいものだと思います。

「ナカト」が女流王将戦のスポンサーに 「中戸賞」創設も

独立と直接の関係はありませんが、青森県東奥日報の記事から。

おいらせ町の衣料品店「ナカト」(中戸俊洋社長)が新たにスポンサーに加わり、同予選で顕著な活躍を見せた二人に「中戸賞」が贈られる。

第二十九期女流王将戦は現在、千葉涼子女流王将への挑戦権を争う本戦トーナメントを展開中。三沢では五番勝負の第二局が「ナカト杯女流王将戦」として実施。通年の名称は「ウエルネス都城霧島杯・中戸賞・第二十九期女流王将戦」となる。

2005年8月18日の青森県百石町で「王将館」がオープンへでも簡単に紹介しましたが、中戸俊洋氏は青森県で将棋の普及に尽力されてきた方です。女流棋士がこういう状況にある中で、様々な方の手助けがあって前進していけるのはいいことですね。

女流棋士新法人設立準備委員会が寄附を募集

2月1日に女流棋士新法人の寄附金募集が始まりました。1口5000円で、できるだけ1人2口以上。目標は1億円とのことです。詳細は上記リンク先をご覧下さい。

目的は「女流棋士新法人設立準備資金・女流棋士新法人当初運営資金」となっています。ということは、新法人の資本金のようなものは含まれないのでしょうか。その他の部分を読むとそれも含むようにも思われてよくわかりませんが、目的の詳細はまだ明確にできない部分があるようです。いくらあると具体的に何ができるのでお金を出してくださいという言い方の方が盛り上がりそうですが、仕方ないこともあるかなと思います。

ご寄付は、設立準備費用として有効に使わせていただき、さらにその後の新法人の運営安定資金、女流棋界発展の礎といたしたく存じます。また、ご協力いただいた皆様のご芳名は新法人発足時に明確に公示し、ご厚情を後世まで末永く記録する所存でございます。

いただいた寄付金の使い道については、新団体設立後すみやかに皆様にご報告いたします。また、ご寄付を頂戴した皆様のお名前は、末長く記念碑などに刻ませていただくと同時にサイトにも掲載させていただく予定です。

本来ならばこれまでの経緯全てを皆様にもご説明した上で、このようなお願いをしなくてはならないとは思っておりますが、様々な立場の多くの方々が関わって下さっていて、この将棋界は成り立っていますので、そこのところをご賢察頂ければと思います

このようなスタンスに賛同できない方がいるかもしれませんが、その場合には目的がより明確な女流棋士ファンクラブ「MINERVA」の会費にあてても、女流棋士を応援することになります。(出費の意味は変わってきますが)

「将棋ビジネス」考察ノート:「寄付」の件の考察で懸念が書かれています。私が個人的に、寄付する人の個人情報の扱いについて書かれていないことが気になりました。今の時代、どんな場合でもそのような注意書きは必須になっていると思います。上の引用では寄付した人の名前をサイトに掲載するとなっていますがそれを望まない人もいるでしょうし、それ以外にどのような使い方をされるのか明確にしておくことがまともな組織には要請されると思います。

もし独立の方向性が変わった場合のことを考えると、返金の必要性が出てくる可能性もありますので、個人情報を保管しておくことは仕方ないのでしょう。そういうことを含めて明記しておいた方がよいのではないでしょうか。

今回の1億円という金額がどのくらい現実的な額なのか私にはよくわかりません。女流棋士を支援するためにすんなりと1万円を出すだけの熱意のあるファンがどのくらいいるのか、今ひとつ実感がないわけです。寄付する人の数もそうですが、ぽんと100口くらい出す人もいるのかなあというあたりが、全体の額を左右するのかもしれません。

よくわからない部分は想像してみるとすると、ここでいくら集まるかで今後の選択肢が変わってくるような状況なのでしょうね。1億円あると何ができるようになるのかというのは私には全くわからないのですが、法人形態がどうなるのかという注目される部分に響いてきそうなのは理解できます。

米長邦雄永世棋聖の言明

1月28日と2月3日に更新された米長邦雄の家女流棋士会に関する話題が書かれています。まだ続きもありそうですが、日本将棋連盟女流棋士会独立に関してどのような立場で臨んでいるのかが気になるという意味で、注目される記事です。

理事会は、女流の総意が独立なら双手を挙げて賛成しますし、出来る限りの応援をしてゆくことで一致しています。現状は反対、慎重、心配という女流棋士もおりますので、女流同士で話し合っていただく。これを静観している状況です。

独立の報道以後、米長邦雄永世棋聖はこのような趣旨の発言を繰り返しています。2006年12月5日に女流棋士会ファンクラブ「MINERVA」来年2月に会員募集開始で紹介した共同通信の記事将棋連盟から女流棋士が独立/自立促した財政改革では独立を促したのは米長邦雄永世棋聖だったとされており、この記事とは発言が不整合なのですが、理由はよくわかりません。

ただ、その記事にあるように財政改革の一環ということであれば、日本将棋連盟女流棋士を資金面で支援することはないのかなという感じはします。上の日経記事に出てくる米長永世棋聖の発言もそのようなことを意味しているのだろうかと思いました。

しかし、女流棋士の存在がなくなってしまったら将棋界は大きな損失を被ることになるというのは共通認識になっていると思います。将棋界には奪い合うほどのパイはないわけですから、もし独立するならば日本将棋連盟は可能な範囲で支援をするという発言が出てくる方が自然ではないでしょうか。そう考えると、上の記述は中立的というよりも独立を牽制しているように私には思えてなりません。

社団法人日本将棋連盟に所属する女流棋士の皆様の幸せを願い続けております。

というのも、今後は願う以上のことは何もしないという意味にも受け取れます。もう少し態度をはっきりさせた方が全体のためになるのではないかと感じています。