日本将棋連盟が大和証券杯の棋譜を著作物と主張

大和証券杯ネット将棋の会員登録のときに承諾が必要なクラブ大和証券杯規約とは別に、大和証券杯ネット将棋公式ホームページでは「利用規約」なるものが存在しています。会員規約とは別に利用規約を設ける意味もよくわからないというのはともかくとして、目立たないところにあるので読んでいない方が多いと思いますし、そういう状態では有効とはいいにくいように思うのですけども、その内容には今までなかったようなものが含まれています。

第5条 コンテンツの取り扱い

  1. 本サイト上のコンテンツ(棋譜、文章、画像、情報もしくはソフトウェア等を含みます)(以下、本コンテンツといいます)は、すべて連盟あるいはスポンサーの著作物です。
  2. 利用者が、本利用規約に違反し、本コンテンツを改変、複製、頒布、送信、表示、実行、出版、使用許諾、移転、譲渡することおよび派生的な著作物を作成することは禁止されています。これらは、法律によって固く禁じられ、違反者は民事上または刑事上の責任を追及されるおそれがあります。
  3. 連盟は、利用者に、本利用規約に従い個人的な目的だけに本コンテンツを使用することを許諾します。
  4. 利用者は、連盟が特別に承認した場合を除き、本サイトを通じて知り得た情報を複製、販売、出版その他いかなる方法においても利用することはできません。

日本将棋連盟が公式に棋譜の著作物性を主張したのは、私の知る限りではこれが初めてです。ただ、著作物だとしてもそれは対局者2名の共同著作物であって、日本将棋連盟もしくはスポンサーの著作物であるとは考えられないので、そのように断言されてもその主張が正しくなるとは私には思えません。サイト上にあるすべての文章や画像が著作物性を持つとも考えられませんし。無理に妥当な形で解釈すると、コンテンツのうちで著作物であるものの著作権はすべてその著作権者が保持していますというくらいが、実質的に意味するところになるのでしょうか。自明な文になってしまいますが、利用規約でそういう規定は結構見られます。認められていない範囲まで過剰に権利を主張するのは誤解を招くのでやめてほしいというのが正直な感想です。

3月29日追記

上の文章に見覚えがあるような気がしていたのですが、思い出しました。将棋倶楽部24利用規約でした。

第5条 コンテンツの取り扱い

  1. 本サイト上のコンテンツ(文章、画像、情報もしくはソフトウェア等を含みます)(以下、本コンテンツといいます)は、すべて弊社またはその供給者の著作物です。
  2. 利用者が、本利用規約に違反し、本コンテンツを改変、複製、頒布、送信、表示、実行、出版、使用許諾、移転、譲渡することおよび派生的な著作物を作成することは禁止されています。これらは、法律によって固く禁じられ、違反者は民事上または刑事上の責任を追及されるおそれがあります。
  3. 弊社は、利用者に、本サイトを閲覧または利用するため、本利用規約に従い個人的な目的だけに本コンテンツを使用することを許諾します。
  4. 利用者は、弊社が特別に承認した場合を除き、本サイトを通じて知り得た情報を複製、販売、出版その他いかなる方法においても利用することはできません。
  5. 本サイトの将棋道場サービスを通じて得られた棋譜等の記録の利用に関して、弊社は利用者の承諾なしにこれを利用できるものとします。

ほとんど同じ表現が随所で使われていることから、この文章を元に書かれたことは間違いないと言えるでしょう。それだけに、「棋譜」という文言を付け加えたり、「供給者」(「コンテンツの供給者」と解釈できると思います)と「スポンサー」と言い換えたりして、小手先の変更によって意味がおかしくなっているのが目立っています。

2005年9月21日にお伝えした日本将棋連盟が月刊棋譜社に申し入れでも見られるように、日本将棋連盟がこれまで棋譜そのものの著作物性に言及することに関して慎重であると私は見ていただけに、今回のこの「利用規約」ではあまり検討せずにこのような文言を含めてしまったのではないかと思わざるを得ません。