Yahoo!JAPAN で将棋特集

Yahoo!JAPANで将棋特集が行われています。Yahoo!JAPANトップページの上部からリンクが張られていますので、普段将棋に興味のない人も多数の人が見たのではないかと思われます。これまでに比較的小規模な企画で実績を積み重ねてきて、集客力という面での将棋の力が評価されたのではないでしょうか。それが直接収益につながる率が低いのが将棋の弱みなのですけれども、ポータルサイトの場合はアクセス数があることがとにかく一番という事情がありますので。

様々な企画が準備されています。

羽生善治三冠の指導対局

11月25日(土)午後2時からYahoo!ゲームで行われます。やり方は以前谷川浩司九段などが行ったときと同じで、平手の3面指し対局を2回行います。対戦相手は当日入場した人の中から無作為に選ばれます。また、対局の模様を生中継する動画が配信されます。対局の解説は早水千紗女流二段です。

瀬川晶司四段・早水千紗女流二段の指導対局。

それぞれが平手の3面指し対局を2回というのは上記と同じですが、対局の権利をYahoo!オークションで入札するというのが目新しい企画です。現在は早水女流二段との対局権が入札にかけられています(入札締め切りは11月13日午後6時17分)。11日正午現在、開始価格3000円に近い価格しかついていませんが、締め切りまでに時間を考えるとまだ上昇の余地があるでしょう。

瀬川四段との指導対局権は、11月21日(火)からオークションにかけられます。(対局日時はまだ発表されていないような気がします。)

究極のオークション
日本将棋連盟が公式にサイン入りの品物をオークションに出品しています。目玉は【全タイトル保持者自筆署名入り】榧七寸盤&掬水作盛上駒セット。タイトル戦で使用できる品質の盤駒だそうですが、開始価格が170万円ということもあって入札者はまだいません。そのほかに現在は「竹風作彫駒(竜王渡辺明直筆揮毫入り桐平箱付)」と「直筆色紙3枚セット(森内名人・羽生三冠・佐藤棋聖)」が出品されており、これから「平成19年指初式で使用の大竹竹風作 盛上駒(会長米長邦雄直筆揮毫入り桐平箱付)」「永世十段中原誠書 特製掛け軸」「名人森内俊之直筆揮毫入り 置き駒(一尺)」が順に売り出されます。
棋士に教わる基本の一手

級位者向けの次の一手が10問出題されています。「次はどう打つ?」と書いてあるのはご愛敬として、問題自体はレベルにややばらつきがあるような気もします。新しいのは、早水女流二段による解説動画が付いていること。動画を収録して配信するのはちゃんとした設備とスタッフを持っていないとできませんから、Yahoo!らしい強みという感じがします。

「月下の棋士」で楽しむ

能條純一作の将棋マンガ「月下の棋士」の紹介ページ。オンラインで読むこともできますが、有料(1巻あたり通常294円)です。

Yahoo!ゲーム - 第7回Yahoo!ゲーム大会 将棋チャンピオンシップ
Yahoo!ゲームで行われる将棋大会。上位入賞するとYahoo!ポイントなどがもらえます。

とりあえず、指導対局のオークションにどのくらいまで入札があるのかに注目しています。指定された日時に別の予定が入っていれば参加できないので、普通の商品よりも条件が不利だとは思うのですが、これが後の入札でも一つの基準価格になってくると思われますので。

将棋倶楽部24買収劇に思うこと

11月10日の将棋倶楽部24が日本将棋連盟の傘下にの続きです。

まず確認からですが、今回の発表は「24インターネット事業を連盟に譲渡する」ということですので、有限会社将棋倶楽部24は存続します*1。ただ、有限会社将棋倶楽部24の事業で将棋対局サイトの運営以外のものがあるとは聞いたことがないので*2、事業主体がかわるだけで実際に作業は久米宏氏に委託されるという形になるのでしょう。文章を読む限り、少なくとも当面は目に見える変化はないと予想されます。有限会社将棋倶楽部24自体は久米氏の個人経営のようなものなので、過労とか何かとリスクがあって不安だということはこれまでも何度か書いてきました。日本将棋連盟が後ろ盾になるのであれば、そのあたりの心配はだいぶ緩和されます。

問題は日本将棋ネットワーク(NSN)との関連ですね。これはもともと日本将棋連盟が合弁の形で設立した会社ですが、現在は日本将棋連盟との資本的なつながりはなく、「唯一の将棋対局公式サイト」という宣伝文句を一定期間許可する契約を結んでいるのだろうと思っていました。この件についてNSN側と話が付いているのならいいのですが、そうでないと途中で契約を解約することになり、違約金が必要になるのではないでしょうか。現在も日本将棋連盟サイトのトップページに「日本将棋連盟唯一の公式ネットワーク」と書かれたNSNのバナーが貼り付けられており、どのように調整が行われたのか(あるいはこれから行うのか)かなり気になるところです。ただ、NSNはずっとお荷物だったので、関係を処理できるならそうした方が良いのは確かでしょう。

最近、日本将棋連盟Yahoo!JAPANとの連携を強めていたのでそちらの方で何とかしようとしているのかと思っていたのですが、将棋倶楽部24を手に入れて独自にいろいろできるようにしたかったのでしょうか。

将来的な有料化を懸念する声も各所で聞かれますが、そのまま有料化したらうまくいかないだろうことはさすがにわかっていると思います。現在無料でできていることは今後も無料でできるとして、それにプラスして有料のサービスを設けるという感じではないかと私は予想しています。現在のサーバで有料サービスを行うのはシステム的に困難なように思われるので、新しいサーバを持ってきてそこには有料会員しかログインできないというような形がいいのかなと。以前ついえてしまった24BBネットの再来みたいなものですね。あのときに協力できていれば違っていたのでしょうけれども。

有料化というと抵抗のある方もいると思いますが、要するに喜んでお金を出してもらえるようなサービスを作って下さいということです。インターネットだけでなく実際に足を運ぶ部分につなげられるとさらに良いですね。簡素なシステムのままいろいろできるようなことを考えたいですね。

*1:紛らわしいですが、ここでは「将棋倶楽部24」と書いたらインターネット将棋道場のことを指し、有限会社を指すときには「有限会社将棋倶楽部24」と書くことにします。

*2:会社概要には「ソフトウェア開発」なども掲げられているので、そういう事業を行っている可能性がないわけではありません。

卒業論文で将棋史

放送大学で「日本将棋の現行ルール確立の過程――持ち駒再利用開始時期の考察」という表題の卒業論文を書いた方のサイト。論文の原稿が公開されています。未読ですが時間のあるときに読んでみようと思います。

Tamago915さんという名前が見覚えがあると思ったら、Wikipediaで将棋関係の編集を頻繁になさっている方だったのですね。こういう方のおかげで知識の流通が促進されているわけです。

海外への普及を目指して

遠山雄亮四段がこのエントリで紹介しているTakodori's Self-brainstorming How to Promote Shogi Globallyの最近の充実度は目を見張るものがあります。

勝手に将棋アンテナに載せるページを決めるときに私が重要視する基準の一つが、そこでしか読めないものがどれだけあるかです。インターネットではリンク1つで別のページにつながるため、同じものが2つ存在する意義は(バックアップを除けば)ありません。プロ棋士のように名のある人であれば、ただ日常生活を描写しているだけでもオンリーワンになりますが、無名な人の場合はそうはいきません。その点、Takodori氏のウェブログは他の追随を全く許さない内容の広さと濃さがあります。

結局何を言いたいかというと、読んで下さいということです。

囲碁でも免状売り上げは苦戦

本棋院の免状発行はこの10年間、漸減傾向で歯止めがかからない=グラフ。

96年度に7354通だったのが、05年度は2791通。約62%減った。

30年前の最盛期には年間2万通を超えていた。減る理由について「囲碁愛好者の減少」「免状の権威低下」「高額な免状料」「免状と実力の離間」「時代の感覚に合わなくなった」などが指摘されている。

将棋界の話は「将棋ビジネス」考察ノート:収支計算書の考察(3) 免状収入について囲碁界の話も含めてありますが、将棋よりも囲碁の方が落ち込みが激しい感がありますね。免状は税金がかからないこともあって利益率が高いので、減少が与えるインパクトは見かけ以上に大きいのではないかと思います。

将棋の場合は免状には必ず竜王と名人の署名が入りますが、囲碁ではそういうことはなかったようで、これから始めて行こうということのようです。日本将棋連盟では瀬川晶司四段の免状とか「福寿記念」免状とかいろいろなことをやっていました。現在は「羽生善治特製色紙プレゼント」キャンペーン実施中だそうです。おまけをつけるとか取得要件の緩和とかは結局のところカンフル剤でしかないとは思うのですが、それで何とかもっているのならやった方がいいのでしょうね。

個人的には免状をもらおうと思ったことがないので、免状を取得する人がどのような動機でお金を出しているのかわからないのですが、免状発行が減少しているのはネット対局の普及も関係あるのではないかと思っています。実力を認定してもらうという意味では免状は形骸化しているという状況は以前からありましたが、「24で初段です」などと言えば通じるようになったことは決定的だったかなと。そうすると、将棋倶楽部24を買収したことも関係してくるとかいうこともあるでしょうか。

名人戦契約問題についていろいろ(57)

11月9日にお伝えした名人戦契約問題についていろいろ(56)と同じ話題です。(下で、報知の記事は共同通信伝だと思います。)

10月20日に連盟、朝日、毎日が協議した席で連盟が提示したが、今月6日に行われた3者協議では両社から明確な回答がなかったという。

連盟は8日、米長邦雄会長名で両社の社長に対し、契約金の総額などを含めて早急に協議するよう求める文書を発送、「協議が不調の場合は、朝日単独主催案に戻さざるを得ない」としている。中原副会長は「提示額はあくまでたたき台。両新聞社から回答がないと話が進まない」。

このあたりが新しい情報です。依然としてわからないことの一つは、今回の提案で「普及協力金」と「名人戦振興金」は5年間限定なのかどうかです。それによって話は相当に違ってくるように思います。それから、「朝日オープンに代わる新棋戦」という表現が「臨時棋戦」という話に取って代わっていますが、これも5年限定と見られることを避けているつもりなのでしょうか。この棋戦をどこに掲載するのかという問題は全く解決していないので、どうせなら日刊スポーツ掲載の女流王将戦に上乗せしてしまうのはどうかと思ったりするのですが。

さて、もし「普及協力金」と「名人戦振興金」の恒久化を視野に入れているとすると、両社合計で8億1800万円という金額を毎年支払うという話になるわけですが、これを両社が飲む可能性があると日本将棋連盟理事会が思っていたのかどうかについて非常に疑問に感じます。とりあえず大きめの金額を始めに言っておくと交渉を有利に進められる的なノウハウはたしかにありますが、それならば「おおむね了承された」などというコメントを撤回しないのは、けんかを売っているようにしか見えないのでまずいのではないかという気がします。

こういうのを見ていて感じるのは、新聞社と日本将棋連盟の協力関係が変質したのかなという思いです。いろいろありながらも両者は共同体のような意識がこれまであったと思うのですが、今回の経緯では将棋の普及という建前を媒介として、自分の利益になる部分だけ相手を利用していこうという姿勢になってきているのではないでしょうか。国家間の外交のように利害調整が大変になるでしょうけども、大義名分がないときには、相手の足を蹴飛ばすのはちゃんとテーブルの下でやってくれとは思います。

実際のところどのあたりが落としどころなんでしょう。理事会の提案の出し方を見ると、ここから値下げできるのが「普及協力金年2億円」か「他の棋戦+名人戦振興金 合計年2億1800万円」かどちらか選んでくれという感じなのかなと思ったのですが、新聞社側から見ればもう少し値切りたいところなのではないかと想像しました。決裂すると「協議が不調の場合は、朝日単独主催案に戻さざるを得ない」とのことですが、実際にそんなことを言い出したらもう笑うしかない感じです。これまでの展開を考えるとありえないとは言えないのがまたあれですけれども、現実には朝日新聞社の単独主催案は一度ご破算になったという扱いではないでしょうか。