『名人』

double crown's piecesのダブルクラウンさんに感化されて、最近古い観戦記を読んだりしています。とりあえず、観戦記の古典とされているものの中で最も有名らしい『名人』(川端康成、新潮社文庫)から*1。私は図書館で借りたのですが、まだ在庫が残っているようです。

これは将棋ではなく、囲碁の対局の様子を小説にしたものです。昭和13年6月から12月にかけて本因坊秀哉名人の引退碁が行われました。相手は「大竹七段」*2。当時としても異例の40時間という持時間でした。

病に苦しみながら打ち続ける名人は、無理がたたったのか、その一年余り後に他界することになります。一つの時代の終わりでした。

文章を読んでいると川端康成の興味が盤上ではなく人間にあることが、すぐにわかります。これは現在の観戦記にはあまり見られない特徴でしょう。その背景にはいろいろなことがあるように思われますが、今ひとつまとまらないのでもう少し他の文章も読んでから考えます。

*1:これは観戦記とは別に書かれたので、本当は小説と呼ぶべきものです。

*2:というのは、小説中の表記で実際は木谷実七段。