寄せが見える本

先週は棋書ミニ投票@将棋 棋書ミシュラン!を取り上げ忘れてしまいました。そこで棋書月間MVPとして最多得票を集めたのが、浅川書房から出版された『寄せが見える本 応用編』でした。2冊で一組となっています。

基礎編は本当に基礎的な問題が中心です。例えば、4一馬3二銀の腹銀とか、3一角3二金型とか、それ系の本には必ず載っている必死形を学ぶことになります。それに対して、応用編は部分図ではなく実戦にも出現しそうな局面を考えさせるなど、もう少し読みの要求される問題が多くなります。しかし、どちらも基本的な構成は同じで、それがこの本を特徴づけるものと言えます。

この本は、「予習問題をまとめて出題」→「まとめて解説」→「練習問題」という構成となっています。この「まとめて解説」の部分が他の本にはない特徴です。この系統の本で、普通の体裁は見開きの左側に問題があり、ページをめくるとその裏側に解答・解説があるというスタイルです。しかし同じ必死問題であっても、妙手一発で解決する問題と、受方に強烈な粘りがある問題とでは自ずから解説量が違ってくるはずです。この本の構成は解説量を問題によって柔軟に変更することを可能にしています。

そして、その後に来る「練習問題」も重要です。この練習問題は予習問題で学んだ手法を確認するためのもので、いわば反復練習と言えるでしょう。問題を解いてみると、この反復が著者によってはっきり意識されたものであることが感じられます。知識と実践。この両輪があって初めて手筋が身に付いたことになるわけですね。

この2冊は、この分野のスタンダードの一つとしてロングセラーになるのではないかと思います。