中将棋のルール

現行将棋で不成とする理由の一つは打歩詰であり、 もう一つは成る前の駒の特性を生かしたい場合である。 銀桂香では後者の場合もありうるが、 飛角歩で不成とする理由は前者の場合しか存在しない。 そして中将棋では打歩詰はあり得ないので、 不成とする理由は後者に限られることになる。

獅子の特殊ルールの一つである「付け食い」を利用すると、歩兵の不成を実現することができます。また、「先獅子」を利用すると麒麟の不成を実現することができます。また、現行将棋でも「連続王手の千日手を回避するための不成」がありますが、中将棋千日手ルールをどう決めるかによってこれが可能になる可能性もあります。

次は駒数が減っていわゆる「駒枯れ」の状態になった場合である。 規則では「玉2枚、成金1枚となれば、成金のある方が勝」となっているが、 これだけでは駒枯れ状態を全て網羅しているとは言うことが出来ない。

成金1枚と言うのは小駒1枚と言う意味であり、 当然太子・酔象も含まれるものと解釈して良いだろう。 玉将ともう1枚の駒が走りの場合ではもっと戦力差が付くことになり、 小駒の場合とは違って容易に敵玉を詰ますことが出来る。 ただし残された駒が猛豹の成駒である角行の場合には、 既にチェスの世界では常識となっているように、 玉将と角行(ビショップ)1枚とでは詰ますことが出来ない。 この場合には唯一の例外として、 引分けとすることを明確にしておくべきであろう。

中将棋の引き分けを考える際には、千日手の問題をはずすわけにはいきません。現在の日本のルールでは(普通の将棋が江戸時代にそうだったように)「千日手は手を変えなければならない」ことになっています。千日手が存在しないならば、原理的には玉将だけが残った局面でも決着を付けることができますから、基本的に引き分けはなくなります。現時点では、玉将2枚だけが残ったら引き分けにするとか、様々な形のルールが提案されていますが、これと決まったものはありません。

私は現在では、中将棋千日手も普通の将棋の千日手ルールと同様にすべきではないかと考えています。そうであれば、玉将とちょろ角(猛豹の成駒)だけ残った場合には引き分けにすることも妥当です。

それと同様に、玉将とと金だけでも、相手の玉将を詰ますことができないために引き分けになるということには注意が必要かもしれません。9×9の盤ならば玉とと金だけで相手の玉を詰ますことができますが、12×12の盤では広すぎて逃げ回る玉を端に追い込むことができないのです。また、玉将と猛豹でもうまく詰ますことはできません。これが太子もしくは酔象(仲人の成駒)ならば可能だと思います。(酔象の場合はかなり難解なのですが、詰ますことができると私は考えています。)

まとめると、千日手引き分けルールのとき、玉将+αで相手の玉将を詰ますことができるのは、αが「歩兵、猛豹以外の駒」のときです。

私の実戦においては駒枯れとはならなかったし、 その経験からしても盤上に3枚の駒しか残らない局面は極少ないことと思われる。 たとえ両者の棋力が同等であったとしても、 90枚もの駒が全く損得無しに消耗されてしまうのは稀なことではないだろうか。 しかしあらゆる局面を想定して規則を定めておくことは、決して無駄なことではない。

私も同感です。ただ、中将棋ルールは決して実戦だけのためではなく、創作ものでも同じルールが適用されるので、詰中将棋次の一手問題などで影響が出るような場面ではやはり整合的なルールが定められていてほしいと考えています。