許せる利用と許せない利用
この話については言いたいことはいろいろあるのですが、ここではそういうことは全部すっとばして次の部分。
だから一見すると犯罪に見える行いが、結果的に著作権者の利益になっているような場合、黙認されるどころか著作権者に非公式に奨励されたりもする(この場合はもちろん罰せられない。犯罪として成立しない)。ここで重要なのは、建前として著作権者は「無断転載はいかなる場合も認められません」と言わざるを得ないということです。実際的な運用上、「ここまでは許せるけど、これは許せない」というのは明文化が非常に難しい。畢竟、著作権者は「全部禁止」と言うしかない。でも実際には許せるものと許せないものが存在するわけです。
将棋の棋譜の場合はそもそも著作物性についての議論がクリアになっていないので話がややこしくなりますが、こういう状況は将棋でも起きているわけです。棋譜をウェブページ上にアップする行為は、多くの場合は主催社の不利益にならず、むしろ利益になる場合が多い(もちろん、形態によりますが)。こういう認識を持っている方は少なくありませんし、主催者側にいる方も同様だと思っています。そうだとすると、こういう使い方ならOKというようなガイドラインを設けてもらえると、お互いに好ましい状況が生まれるように思われるわけですが、なかなかそうはなっていません。
逆に、主催者側から見てこれはまずいと感じられる利用形態に対して裁判で対抗するという手段もなかなか取りにくい現状があります。一つは裁判で負けたら取り返しが付かなくなりますし、もう一つは勝ったとしても基準がはっきりすること自体が主催社にとって好ましくないかもしれないという事情があります。
例えば、スクウェア・エニックスがドラクエ8無許諾攻略本を著作権侵害などで提訴の記事では次のような話がありました。
この裁判は、訴えたスクウェア・エニックス側にとっても、危険な一面を秘めている。というのは、ゲームの攻略本において守るべき著作権法上の具体的基準が裁判で示されてしまうと、その内容次第では逆に「その基準内なら許諾を取らなくても攻略本を出版できる」として無許諾攻略本の出版に踏み切る出版社が続く可能性も否定できないからだ。
そういう意味では著作権論4『ガイドライン構想』のようにファンの側で勝手にガイドラインを作ってしまうというのも一つの手なのかなと思います。現実的には困難が多そうですけれども。